中国発のソーシャルメディアとして疑惑の目を向けられながらも、若者を中心に圧倒的な人気を誇るTikTok(ティックトック)が、今年11月の米大統領選に大きな影響を与える可能性が出てきた。
米議会では民主党も共和党も、TikTokには中国政府の息がかかっており、アメリカの安全保障を脅かす恐れがあると批判している。だが両党の事実上の大統領候補はどちらも、有権者とりわけ若者にリーチするため、選挙活動にTikTokを積極的に利用するつもりだ。
再選を狙う民主党のジョー・バイデン大統領は4月、TikTokの親会社であるバイトダンス(北京字節跳動科技)が、2025年1月までにTikTokのアメリカ事業を売却しなければ配信を禁止する法案に署名した。
共和党の大統領候補となることがほぼ確実視されているドナルド・トランプ前大統領も、在任中にTikTokを禁止しようとしたことがある。だが、トランプ陣営は6月1日にTikTokのアカウントを開設。フォロワーは既に640万人を超える。
ちなみに4月に厳しい法案に署名したバイデンも、実は2月にTikTokのアカウントを開設している。
「良くも悪くも、24年大統領選はTikTok選挙になるだろう」と、戦略的コミュニケーション企業PRCGのジェームズ・ハガティ社長兼CEOは語る。「25年になれば(4月に成立した法律によって)使用禁止になるかもしれないが、年内は健在だ」
有権者の2割はZ世代
バイデン陣営もトランプ陣営も、若者にメッセージを届けるためにはTikTokが不可欠だという結論に達したのだろうと、政治コンサルタントのジェイ・タウンゼンドは語る。
「(バイデンもトランプも)若者にアピールしようと必死だ。とりわけ(トランプが大統領選に勝利した)16年以降に成人した層を取り込もうとしている」と、タウンゼンドは語る。「この世代は上の世代と比べて支持政党や候補が固まっておらず、どちらに転ぶか分からない」
タウンゼンドはまた、「政治の世界では、有権者がいる場所に(候補者が)出向くことが鉄則だ」と語る。そして若者がいる場所がTikTokだというわけだ。
今年3月21日の時点で、アメリカにおけるTikTokのアクティブユーザーは1億5000万人を超えた。ただ、1月のピュー・リサーチセンターの調査では、18~29歳の62%がTikTokを使っているのに対して、65歳以上ではわずか10%にとどまる。
一方、タフツ大学の市民の学習と社会参画に関する情報研究センター(CIRCLE)によると、Z世代(現在15~29歳)の潜在有権者は4000万人を超える。全有権者の約20%を占める計算だ。
昨年10月末の調査では、18~34歳の57%が、選挙に行く「可能性が極めて高い」と答えたが、なんらかの政党または候補者の主張を聞いた人は19%しかいなかった。