「利用者数が少ない駅」こそ危険
しかし、筆者はこの「利用客が10万人以上」という基準が引っかかる。利用者数が少なくても、優等列車が高速のまま通過する駅は危険だ。通過する列車の周囲に強風が吹き、ホームにいる人が列車に引き込まれるおそれがあるからだ。「黄色い線の内側に下がって」というアナウンスにはちゃんと理由がある。列車と接触しないホームだから安全とは言えない。
いずれにしても、鉄道事業者が自社路線の環境を見極めて整備する必要がある。
駅の大規模リフォームが必要になる
JR東日本はホームドアについて「東京圏在来線主要路線の線区単位の330駅758番線(のりば)へ、2031年度末頃までの整備を目指す」と明らかにしている。整備に時間がかかっている理由として、国鉄時代からの古い構造の駅が多く、大規模な改良が必要になると説明している。
中央線に限らず、プラットホーム上の構造物とホーム端の隙間がないところがある。山手線の東京駅などを見ると、大量の乗降客を移動させるため、階段を広く取っている。そのため階段とホームの隙間が小さく、ホームドアを設置したら人が通れない。
階段を狭くしようとすれば、既存のエスカレーターを移設する必要が出てくる。また、バリアフリー対策としてエスカレーターを新設すれば階段が狭くなる。こうして階段を狭くした場合、ホーム上に乗降客が滞留するため、かえって危険が増す。
これらの問題をどのように折り合いを付けていくか。階段やエスカレーターの増設も必要で、連絡通路も増やす必要が出るだろう。ホームドアをポンと追加するどころではない。