「自費出版扱い」の供託金制度
N党とは関係ない半分以上の候補者の中にも、自ら供託金を積んで独自の(時に不思議な)世界観を有権者に聞かせたい人たちがいて、供託金制度とは現代社会に一体どう捉えられているのだろう、自費出版みたいな扱いなのだろうかとぼんやり考えた。私の周囲では「96歳のドクター中松がむしろしっかりした候補者に見える」との意見もあり、泡沫候補も長年居続ければ泡沫ではなくなるのかもしれないとの笑い話も聞こえていた。
だが都知事選の前、5月の都議選補選後に「つばさの党」が勧善懲悪的な“お仕置き”をきっちりと当局から受けたのを見ていた世間は、ネット的な悪ふざけが割に合わないのを学習していたように思う。都外のユーザからもSNSでいじられるN党の扱いはどこまでもイロモノであり、蓋を開けてみれば、ポスター掲示板で彼らが押さえた「広告枠」を買うという悪ふざけに応じる人は多くはなかった。
得票トップ3候補者を除く候補者は全員供託金を召し上げられるが、24人分の供託金総額7200万円に対してN党のもくろみがどこまでペイしたのか、「民主主義への挑戦」には疑問が残る。
小池百合子氏の圧倒的な強さ
非選挙的な思惑の参加者が多すぎる――。
とはいえ、そんな問題含みの都知事選を前にした選挙予測では、「国政に先駆けた高校授業料無償化アピールで子育て層を完全に味方につけた小池百合子が強すぎる」そして「残りはアンチ小池票を誰がどう分け合うかだろう」との読みが優勢だった。
小池百合子氏が掲げた公約スローガン「首都防衛」の4字は強かった。もともと、闘う女性政治家の先駆けというイメージを堅持してきた小池氏には固定的な女性支持者がいる。その闘う女イメージの彼女が、チルドレンファーストというスローガンの下、待機児童数大幅改善、国政に先駆けた高校(および都立大学)授業料無償化実現という実績を背に、いわゆる“生活者”の漠とした不安を汲み上げて「私があなたたちを救います」と言わんばかりの堂々たる絵に、私は「百合子の勝ち」を確信した。