私大は「年内入試」傾向

国立大に広がる総合型選抜。その潮流をたどれば、1990年に慶応大が初めて実施したAO入試に行き着く。

学力に頼らない入試としてじわじわと認知度があがり、私立大学全体の学校推薦型選抜と総合型選抜の合計定員は14年度に一般選抜の定員を逆転。ほぼ12月までには合否が決まるため「年内入試」とも呼ばれていて、現在は一般選抜が4割、推薦型入試が6割に。もはや私立大の年内入試は“当たり前”となっている。

推薦型入試の専門塾「洋々」の清水信朗さんは、

「大学は優秀な生徒を取りたいと思っているが、優秀の定義そのものが変わってきた。産業構造の変化で、社会がペーパーテストだけでは測れない、思考力やコミュニケーション能力などを求めるようになった。大学でも学力だけではなく、ソフトスキルを併せ持つ学生を欲しています」

と語る。

学業以外に、探究活動やボランティア、スポーツ、芸術などの打ち込んできたこと、得意とするものが武器になる。大きな大会で賞を取れば強みになるが、必ずしも華々しい経歴は必要ないと、教育ジャーナリストの神戸さんは話す。

「誰もが名だたる結果を残せるわけではありません。大学は結果ではなく取り組みに対して評価します。がんばったと思えることは、堂々とアピールしましょう」

最後に00年度に総合型選抜を導入し、現在は定員の3割にあたる763人の総合型選抜(AO入試)枠がある東北大の滝澤博胤理事・副学長がアエラに語った言葉を紹介しておこう。

「2000年からの追跡調査で、総合型選抜(AO入試)によって優秀な学生が取れていることがわかり、その後、全学部に広げました。今後も優秀な学生を国籍にかかわらず受け入れたいと思っており、将来的には総合型選抜を100%に拡大することもありうる」

難関国立大に確かに広がる推薦入試。多くの生徒に合格のチャンスがあるのは間違いない。(教育ライター・柿崎明子)

※AERA 2024年7月1日号より抜粋

当記事は「AERA dot.」からの転載記事です。AERA dot.は『AERA』『週刊朝日』に掲載された話題を、分かりやすくまとめた記事をメインコンテンツにしています。元記事はこちら
【関連記事】
「学年の半数超」が東大京大合格…灘校長が語る「世の不条理と対峙するために小学生で経験してほしいこと」
人気校に合格したのに高校受験を考えることに…"英語教育に熱心な学校"を選んだ親子に起きた「想定外の事態」
定期テストの準備は2週間前からでは遅い…偏差値70超の生徒が書いた驚愕の「勉強計画見える化表」の中身
医学部に合格したのに、医師にすらなれずに退学…「頭がいいから医学部受験」を疑わなかった親子の末路
「かつては東大卒よりも価値があった」47都道府県に必ずある"超名門"公立高校の全一覧【2022上半期BEST5】