「偏差値50レベルの学校に入れる意味はあるのか?」
中学受験に挑戦させるからには、できるだけ偏差値の高い有名校に入れたい。これが多くの親の本音だと思う。しかし、今は世の中の価値観が多様化し、高学歴であることが必ずしも将来の幸せに結びつくとは限らなくなっている。こうした中、近年の首都圏の中学受験は、「わが子にとってのベスト校」として、偏差値45〜55の中堅校を選ぶ家庭が増えている。
だが、一方で何が何でも偏差値の高い学校へわが子を入れたがる親も一定数存在する。特にその思いが強く出るのが、中学受験を経験したことがない偏差値70超えの地方トップ校出身の父親たちだ。地方のトップ校に進学する子というのは、高校受験の模試では偏差値70は当たり前、72あたりの学力を備えた上位2%を指す。50人に1人、つまりクラスに1人いるかいないかの世界を勝ち抜いてきた人たちだ。そういう人たちにとって偏差値50以下の学校は、校舎が荒れ果て、ヤンキーたちがのさばっているどうしようもない学校というイメージが固定されている。
そして、目の前の勉強に一生懸命取り組んでいる子供と、それを献身的にサポートする母親に向かって、平然とこういうのだ。
「わざわざ高い金を払って、偏差値50レベルの学校に入れる意味はあるのか?」
小学校で100点の子たちが中学受験に挑戦している
偏差値というのは、そのテストを受けた人の全体に対して、自分がどの位置にいるかを知るためのもの。当たり前のことだが、同じテストで同じ点数を取ったとしても、母集団が変われば偏差値の数字も変わってくる。高校受験の模試は、その都道府県の公立中学校に通うすべての生徒が受ける。同じ数学のテストを受けるにも、数学の成績が5の子もいれば、1の子もいるわけで、点差は大きく開く。
一方、中学受験に挑戦する子供たちは、小学校のカラーテストでは100点を取る子がほとんどだ。中学受験では、そういう「勉強ができる子」がこぞって集まって来るため、おのずと偏差値は厳しく出る。また、通っている塾によっても偏差値は変わってくる。御三家狙いが集まるサピックスの偏差値50は、中堅校がボリュームゾーンの四谷大塚では偏差値55を超え、あらゆる偏差値帯の学校をカバーする首都圏模試では偏差値60を優に超える。このように、どんな学力レベルの子が受けるかによって、偏差値の数字は大きく変わってくる。「偏差値50」という数字だけを見て、“ざんねんな学校”と思ってしまうのは、お門違いだ。