アメリカ大統領選をめぐる歴史的大誤報
共同通信だけでなく、当確報道の誤報は過去に例が限りなくある。大きなところでは、2000年のアメリカ大統領選で起きた誤報がある。民主党のアル・ゴア氏と共和党のジョージ・W・ブッシュ氏がギリギリまで競り合った。最後にフロリダ州の結果でどちらが勝つか決まるという時、アメリカの複数のメディアがゴア氏に当確を出したのだ。
この時のことは覚えているが、ゴア氏が大喜びしてブッシュ氏に電話したことも伝えられた。それが間違いだったと知った時、この時間は何だったんだ? と日本の視聴者としても困惑した。
もちろん、報道機関が事前の各候補者の情勢予測を報じることは、有権者にとっても有益だ。投票の判断材料になる。だが当確判定を各メディアが競うように報じるのはどうかと思う。あくまで予測の範疇なので、100%はないはずだ。だがあたかも間違いないように報じている。「当選確実」とメディアが報道するのはどこか間違っていないだろうか。
判断材料を集めるには莫大な労力がかかる
そして、当確判定を出すためには大変なエネルギーと予算をかけて情報を収集する必要がある。各メディアの経営が厳しくなっているこの時代に、莫大な労力をかけてそれぞれ当確判定をする必要がどれだけあるだろうか。
筆者は「NHKの当確判定手法」について情報を得た。当然ながら、当確を出すためにはいくつもの情報が必要になる。NHKの場合、過去の得票データ、予想投票率、各陣営への情勢取材、街頭アンケート、期日前投票出口調査、投票当日出口調査が元データになる。
選挙当日にはこれらを統計的に処理し、選挙の専門部隊が協議した上で明らかな差があれば、開票速報番組やテロップで20時に「当確」を出す。ここまではいいとして、その先には問題を感じる。差が出ていなければ、開票所での票を読むことになる。
双眼鏡で票の仕分け作業を目視して数える「手元票カウント」(通称バードウォッチング)、選挙管理委員会(選管)が公式発表する前に開票所で確認できる「ウラ票」、さらには選管幹部との事前の関係構築によりリークされる「ウラウラ票」などを積み上げて判断する。