【伊達】なるほど、刺激を与えることが大切なんですね。

【西】その通りです。少し難しくなりますが、神経細胞と神経細胞をつなぐ「スパイン」という神経細胞があって、刺激を与えると数分でスパインが細胞からニョキニョキたくさん出てきます。

細胞を介してスパイン同士がつながると、新しい神経ネットワークができるのです。ネットワークは大人になってからでもいくらでもできます。つまり、私たち人間は歳を重ねてもまだまだ進化できるというわけです。

【伊達】それは嬉しい。「人間の脳は6歳までに90%以上が完成する」と聞いたことがあります。小さい子どもを見ると、まだまだ伸びしろがたくさんあると思ってきましたが、私たち高齢者も捨てたもんじゃないんですね。

アルツハイマーの進行を遅らせることができる⁉

【西】「脳の発達は6歳まで」といまも信じられていますが、それは古い常識。私はその常識を打ち破っていきたいと思っています。大人だってまだまだ捨てたもんじゃありません。

【伊達】でも、私のように80歳を過ぎても大丈夫ですか?

【西】もちろんです! 指を動かすことで、刺激になり、脳の神経細胞同士のネットワークがつながる可能性は大いにあります。

【伊達】アルツハイマー病の予防にもなりますか?

【西】期待できるかもしれません。重度になってしまうと難しいかもしれませんが、軽度の場合は、トレーニングによってアルツハイマーの進行を遅らせることができることもわかっています。

手をつないで歩くシニアカップル
写真=iStock.com/pixelfit
※写真はイメージです

おりがみで「あれっ、名前が出てこない」がなくなる

【伊達】高齢になると、人の名前が出てこなかったり、いろいろなものの名前が思い出せない人もいますよね。「ほら、あの人、誰だっけ?」とか、「あれ」とか「これ」とか、指示語がやたらと多くなったり(笑)。そういうのも、おりがみを折ることで減る可能性はありますか?

【西】そうですね。おりがみを折ることで言語力が上がることがわかったという研究はあります。この研究では、19人の被験者を集めて3週間、おりがみやほかの手を動かす訓練をしてもらいました。その結果、2つのことがわかりました。ひとつは訓練期間の前後で、手先の器用さが上がったこと。

もうひとつは、意味言語課題(言葉の意味をいってもらう課題)で、言葉の意味を回答するスピードが速くなったことです。

【伊達】言葉の意味をパッと答えられないのと、人の名前が出てこないのとは、少し違うような気もしますが。