【西】因果関係はまだよくわかっていませんが、この実験がそもそも、絵を見せてそれが何かをパッといえるかどうかを問う形で行われたことを考えると、記憶を引っ張り出して言語化する能力はおりがみによって上がったといえるでしょう。
そう考えると、おりがみを折ることで、会話の中の「あれ」や「これ」などがなくなることが期待できるとも考えられます。
「頑固老人」から「穏和老人」へ
【伊達】ほかにはどんな研究がありますか?
【西】海外の研究ですが、実際におりがみのトレーニングをしたことで、「女性のメンタルローテーション力が高まる」という研究もあります。
メンタルローテーション力とは、たとえば、積み木で何かを作るときに、それを回転させると、どんな形になるか、頭の中で想像する力のことです。IQを測るときに、複数積まれている積み木を、裏側に隠れているものまで数える、という問題があります。メンタルローテーション力があるかを見る問題です。
営業の方で、お客様に見えるように資料を渡すと、自分がまったく読めなくなる人がいます。これは、メンタルローテーション力が弱いためです。
【伊達】年齢とメンタルローテーション力は何か関係がありますか?
【西】歳を取ると、メンタルローテーション力は下がる傾向にあります。視点が固定されてしまい、いろいろな角度からものを見るのが難しくなります。昔はそうでもなかったのに、高齢になって頑固になるのはこのためです。おりがみを続けてメンタルローテーション力が上がると、頑固さがなくなり、穏和な性格になる可能性もありますね。
脳は新しいことにチャレンジするのが好き
【西】パンダにゴジラに犬……。伊達さんのおりがみは、どれをとってもオリジナルなものばかりですね。
【伊達】自分で工夫して、ああでもない、こうでもないって、やっているのが楽しいんですよ。それ、脳の老化防止にかなり役立っていると思います。
【西】「創造性には、新しいことに対してオープンな態度と、柔軟な思考が必要」ということがわかっています。保守的な人は新しいものを作り出すのが苦手です。たとえば、電化製品で新製品に興味がない人は、創造性が乏しい傾向にあります。
常識にとらわれていて、柔軟な思考ができない人もそうです。離れた場所に暮らす人とのコミュニケーションは電話が当たり前、と思っていたら、メールでのやりとりは生まれていなかったわけです。伊達さんも保守的というより、柔軟な思考をされるほうですね。
【伊達】それは、あるかもしれません。おりがみでも、昔からある伝統的な折り方をベースにしつつも、自分で紙をいじりながら、オリジナルを作るのが楽しいです。
【西】その発想こそが大事なんです。