ゆうちょ銀行との連携も考えられる

公益性を持つ鉄道事業も運営するJR東日本の最大の強みは、格付けにも裏付けされた、圧倒的な安心感・信頼感・ブランド力である。

そのJR東日本が運営するJRE BANKを含むSuica経済圏は、この先、JR各社や首都圏私鉄各社との連携に加え、日本郵政や楽天などとの連携も考えられよう。

実際、2024年2月には、JR東日本グループと日本郵政グループとが、「社会課題の解決に向けた連携強化」に関する協定を締結している。顧客減少に直面する両社は、郵便局・駅の一体経営などに加え、デジタル化による地域の暮らし支援として、①ゆうちょ銀行とモバイルSuicaの連携、②両社グループ共同での加盟店開拓を挙げており、JR東日本・日本郵政連合の進展も見込まれる。

日本郵政グループ、JR東日本グループの共同会見。写真は左から増田寬也日本郵政社長、深沢祐二JR東日本社長=2024年2月21日、都内
写真=日刊工業新聞/共同通信イメージズ
日本郵政グループ、JR東日本グループの共同会見。写真は左から増田寬也日本郵政社長、深沢祐二JR東日本社長=2024年2月21日、都内

JRE BANKが所属しているのは「楽天銀行」

ところで、実は、JRE BANK自体は銀行免許を持っておらず、ネオバンクという形態をとっている。

ネオバンクとは、自らは銀行免許を持たず、既存銀行のインフラを利用し、金融サービスを主にスマホなどで提供する形態だ。

JRE BANKの場合、所属銀行は楽天銀行であり、JR東日本グループ傘下のビューカードが銀行代理業者となる。ユーザーが持つ口座も、楽天銀行「JREはやぶさ支店」、同「JREとき支店」、同「JREこまち支店」のいずれかとなり、実際の預金の預かりや住宅ローンの貸付などは楽天銀行が行うことになる。

ネオバンクとして、金融サービスを提供するメリットは、時間とコストだ。自社で銀行免許を取得するには、システム構築など莫大ばくだいなコストがかかり、認可にも長い期間を要することになる。

金融インフラを提供する楽天銀行や住信SBIネット銀行など既存銀行側のメリットは、顧客層と手数料の拡大となる。

JR東日本・日本郵政・楽天の連携には注目

なお、現状、JRE BANK口座と楽天IDとの連携はなく、楽天ポイントが付与されることもない。今のところ、可能性は低いが、将来的に、Suica経済圏と楽天経済圏が連携するようになれば、他を圧倒する一大ポイント経済圏が誕生することになろう。

なお、2021年3月、日本郵政グループと楽天グループは資本・業務提携しており、日本郵政が楽天グループに1500億円出資している。JR東日本・日本郵政・楽天の3社による連携の動きにもこの先注目しておきたい。