背景には人口減少と移動ニーズの減少がある

滑り出し好調のJRE BANKを開設したJR東日本の狙いはどこにあるのだろうか。

JR東日本グループの経営ビジョン「変革2027」(2018年7月)によれば、今後の経営環境の変化として①人口減少と②鉄道による移動ニーズ減少を挙げている。

①人口減少においては、営業路線内である東京圏(東京、埼玉、千葉、神奈川)では、2025年以降、緩やかに人口が減少し、東北地方では、2040年までに3割近くの人口減少が見込まれる。

②鉄道による移動ニーズ減少では、2020年以降、人口減少や働き方の変化、ネット社会の進展や自動運転の実用化などにより、鉄道による移動ニーズが縮小し、固定費割合が大きい鉄道事業では急激に利益が圧迫されるリスクが高い、としている。

このため、鉄道を中心とした輸送サービス事業から、生活サービス事業とIT・Suica事業に経営資源を重点投入することで、鉄道事業と非鉄道事業との割合を現状の7:3から6:4にシフトしようとしている。

JR東日本では、銀行を持つことでJRE POINTやSuicaの魅力を高め、①鉄道やホテルの利用や駅ナカ消費の拡大、②顧客マーケティングへの活用などにより、グループ全体の収益の多様化と拡大を目指しているのだ。

山手線の電車
写真=iStock.com/Christian Ouellet
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「ごちゃごちゃしている」という改善点

JR東日本肝いりの銀行開設であり、特典もキャンペーンも大判振る舞いではあるが、JRE BANKには改善点も多そうだ。

その際たるものが、「ごちゃごちゃしている」「面倒くさそう」というものだ。

最大の売りである、特典を得るためクリアすべき条件が複雑に設定されており、特典を受ける際には、「えきねっと」などJR東日本の他のサービスとIDを連携する必要がある。

細かい話だが、割引など特典利用の対象は、JR東日本の営業路線に限られており、例えば、多くのビジネス・観光需要があるJR東海道新幹線はJR東海の管轄のため対象外である。また、敦賀まで開業したばかりで話題のJR北陸新幹線も、特典の対象となるのはJR東日本の営業路線内である東京~上越妙高間までだ。

無料Suicaグリーン券を除けば、特典の多くは割引特典であり、パッケージツアーや50歳以上が入会できる「大人の休日倶楽部」の方が、割引率がよく使い勝手がいいとの声もある。

特典に関しては、こうした特典利用の煩雑さに加え、他社でみられるような、開業キャンペーン後の特典改悪リスクを早くも懸念する声もある。

また、JR東日本のサービスには、既にSuicaやビューカードなどがあり、「JRE BANKとJREポイントの違いは?」「JRE BANKとSuicaやビューカードとの関係が分からない」「JALカードSuica付が、ポイント還元で最強なのでは」といった声もSNSには上がっている。