「Suicaアプリ」を2028年度に投入する計画

その他、特典を得るために必要な、預金残高300万円以上や給与振込口座への指定などの条件も、多くのユーザーにとってハードルが高いといえよう。

特に、給与や年金の振込口座の指定変更は、JRE BANKに限らず、簡単ではない。例えば、既に利用しているメガバンクやネット銀行の給振口座を、住宅ローンやクレジットカード、電気料金などの引落口座にしている場合も多く、これらを同時に移すとなると手続きも大変なものになる。

こうした問題点の解決には、ポイントやIDの整理統廃合や、分かりやすいマーケティングが不可欠であるが、JR東日本側でも早速、以下の対応策を打ち出している。

2024年6月、JR東日本は、中長期ビジネス成長戦略「Beyond the Border」を発表した。このなかで「Suicaアプリ(仮称)」を2028年度に投入するとしている。「Suicaアプリ」では、鉄道・交通、移動と一体のチケットサービス、金融・決済、生体認証、マイナンバーカード連携、タイミングマーケティング、健康、学び、物流、行政・地域サービスとの連携などを順次盛り込んでいくという。

「Suica経済圏」を拡大し、鉄道サービスだけでなく、非鉄道サービスと連携した事業拡大により、楽天、PayPay、Ponta、dポイント、Vポイントの5大ポイント経済圏に挑むことになる。

街角でスマホを使う女性
写真=iStock.com/maruco
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会員IDの統合により「ごちゃごちゃ」の解消へ

なお、JR東日本では現在、「モバイルSuica」や予約サービスの「えきねっと」など鉄道サービスの他、クレジットカードの「ビューカード」、銀行サービスの「JRE BANK」、ポイントサービスの「JRE POINT」、ECの「JRE MALL」などを展開している。それらの多くは会員IDなどが別々だ。2027年度までにこれらの会員IDを統合し、統一IDを構築するという。まだ先の話だが、ユーザーからの不満が多い「ごちゃごちゃしている」「面倒くさい」も解消していきそうだ。

JR東日本では、会員ID統合とSuicaアプリなどによる「Suica経済圏」の拡大により、2023年度の非鉄道サービス(生活ソリュ-ション)の営業収益8470億円、営業利益1703億円を、10年後の2033年度には倍増させる計画だ。

なお、国内では、Suicaをはじめ交通系ICカードが独占状態だが、海外では普及しているクレジットカードの「タッチ決済」での乗車が可能な鉄道やバスが、国内でも増えてきている。首都圏では、東急電鉄が2024年5月から、クレジットカードでのタッチ決済乗車の実証実験を始めており、Suicaには潜在的脅威となりそうだ。