30代未婚女性にのしかかる「結婚圧」

千紗さんは「アセクシャル」という概念と出会ったことで、長い間、呪縛されていた「人は誰でも、恋愛するもの」という少女漫画の刷り込みから解放された。しかし、30代には更なる呪縛が待っていた。それが、「女は、結婚して一人前」という“結婚圧”だった。

「保守的なカルチャーの会社にいたので、30歳を超えると『結婚して』という圧力をひしひしと感じました。ずっと独身だと、変な目で見られる。性格に問題があるとか、仕事でうまくいっても、『独身だしねー。時間とか使えるし』と言われるだけ。そういうのが面倒くさくなって、恋愛しないで結婚できる手段はないのかと検索して、よくわからない団体のマッチングサービスを見つけました」

スマートフォンでハートマークのアイコンを押した人の手元
写真=iStock.com/Tonktiti
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男女20人ほどを集めた「お見合い」にも参加したが、なかなかうまくいかない。ここで5年間ほど活動した後、「カラーズ」ができたことを知り、面談に行き、すぐに入会した。「カラーズ」は2015年、LGBTQを含むセクシャルマイノリティの人に向け、恋愛を伴わない結婚=友情結婚を可能にする、日本初で唯一の結婚相談所としてスタートした。

あらゆるモテない条件が揃っていた

「会社の問題だけでなく、ずっと一人で生きていくのは寂しいかも、という不安もありました。友達も子どもができると家庭優先になってなかなか会えないし、私だけ独身で生きていくのは孤独になるんじゃないか。恋愛がなくても、パートナーとして信頼しあって暮らしていける人がいるんじゃないかと思い、カラーズはきちんとした仕組みがあるので入会しました。まだ、少女漫画の夢物語を信じていたんです」

「カラーズ」で友情結婚を望む男性はゲイがほとんどで、女性はレズビアンより、アセクシャルが圧倒的に多い。だが、千紗さんにはなかなかお見合いが回ってこなかった。

「30代後半で、まず年齢が高かった。友情結婚も普通の恋愛マーケットと同じで、若くて外見が良くて、年収が高すぎない女性がモテる。それと、子どもが欲しい人が圧倒的に人気がある。男性は7〜8割は、自分の子どもを欲しがる。私、子どもは欲しくなかったので、あらゆるモテない条件が揃っていました」