シニア向けのシンプルなスマホではドーパミンが出にくい

スマホの中には新しい情報が膨大にあります。そういった刺激に接するたびに、脳内ではドーパミンが分泌されます。

それ以前に、はじめて手に取ったスマホでは、使い方がわからない場面にも多く出くわすでしょう。そういうときも、ドーパミン分泌のチャンスです。

「どうすればいいんだろう?」→「わかった!」という発見の喜びが、ドーパミンを引き出します。ですから、使い慣れた家電やテレビに囲まれて一日を過ごすシニアよりも、積極的に新しいデジタル機器を使うシニアのほうが元気なのは当然なのです。

この観点から見ると、シニア向けに機能を減らし、使いやすさに特化したようなスマホは、実はよくないのです。「使い方がわかった!」という発見の喜びがなく、ドーパミンが出にくいからです。

ぜひ、若い人々と同じものを使ってみてください。そしてドバドバとドーパミンを出し、脳を若返らせてください。

スマホを使用する高齢者の手元
写真=iStock.com/VioNettaStock
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過去の素敵な思い出を反芻するのは脳に良い

デジタルの有効な活用方法はまだまだあります。

認知症の患者さんによく行う「回想法」という治療があります。これはアメリカではじまった心理療法なのですが、認知症の方に、過去のいい思い出を回想してもらうことで、いわゆる「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンやオキシトシンを分泌させるものです。すると脳が活性化して、認知症の進行を抑えたり、自尊心が高まるといった効果が期待されています。

認知症の方は最近の記憶はなくしてしまいますが、昔の記憶は脳の奥深くに残っています。それを掘り起こすと、「そういえばあんなこともあった、こんなこともあった」と関連する記憶がどんどん引き出されていき、脳の中の循環がよくなります。

ちなみに、回想法はうつ病や自律神経失調症の方にも使われる療法です。そういう方は、得てしてネガティブな考えをぐるぐるとループしてしまうのですが、いい思い出に触れることで、その負のループを断ち切れる効果があります。脳にとって、よい記憶を思い出すことは、とてもいいことなのです。

そして、この回想法に近いことが誰でも、より効果的に行えるのがデジタルです。

過去に旅行した場所にまた行くのは簡単ではありませんが、Googleマップを見れば、あっという間にその場所の光景が見られます。ストリートビューという機能を使えば、その場を歩くように散策できるでしょう。