胃腸の疲れは自覚しやすい。一方で、自覚症状がなく疲労を蓄積させていく臓器もある。糖尿病専門医の牧田善二さんは「内臓の疲れのなかでも、最も注意が必要なのが腎臓だ。腎臓は“沈黙の臓器”とも言われる。慢性腎臓病は静かに進行していき、気づいた時には手遅れになりがちだ」という――。

※本稿は、牧田善二『疲れない体をつくる最高の食事術』(小学館)の一部を再編集したものです。

腎臓の3Dイラスト
写真=iStock.com/peterschreiber.media
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疲れには大きく3つの種類がある

一口に「疲れ」と言っても、さまざまな種類があります。

スタンフォード大学でアスレチックトレーナーを務める山田知生氏は、著書『スタンフォード式疲れない体』の中で、疲れには大きく3つの種類、すなわち「脳神経系由来の疲れ」「筋肉の疲れ」「内臓の疲れ」があると区分けしています。

たとえば、難しい問題について考えたり、長時間の会議に参加したり、あるいは、ストレスが溜まっているときなども、「あー、頭が疲れた」と感じるはずです。

激しい運動をすれば、筋肉が疲れます。逆に、デスクワークばかりで運動不足の状態が続くと、首や肩、背中がこります。これもまた、一種の筋肉の疲れです。

一方、内臓の疲れで自覚しやすいのが胃腸です。食べすぎたり、消化の悪いものや傷んだものを口にしたりすれば、胃もたれ、吐き気、腹痛、下痢などの胃腸症状がてきめんに現れます。

これら3つの疲れは、お互いさまざまにリンクしています。

適度な運動をしたことで「筋肉の心地よい疲労感」に包まれていれば、思考も前向きになり、内臓も活発に働きます。

「腎臓」の疲労は全身の疲労を呼ぶ

でも、内臓が疲れていて体調が悪ければ、いいアイデアも浮かばないし、運動をする気にもなりません。頭も筋肉もネガティブな状態にし、悪い慢性疲労を蓄積させるという点で、内臓の疲れはタチが悪いのです。

内臓の疲れのなかでも、最も注意が必要なのが「腎臓」です。

腎臓は、胃腸のようにすぐに悲鳴を上げないけれど、とても疲れやすい臓器です。そして、腎臓の疲労は全身の疲労を呼びます。

みなさんが慢性疲労を蓄積させている裏には、腎臓の劣化があるかもしれません。

腎臓は空豆のような形をしており、背中側の左右に2つあります。

ストレスで胃がキリキリ痛んだり、緊張して心臓がドキドキしたりすれば、いやでもそれら臓器の存在を意識しますが、腎臓は「沈黙の臓器」と言われるくらいおとなしいので、どうしても軽視されがちです。

しかし、腎臓は非常に大事な「解毒」という役割を担っています。

私たちの体には、ただ生きて呼吸をしているだけで老廃物や毒素が溜まります。それらを体の外に出さなければ、疲れるどころか命を失ってしまいます。

その老廃物や毒素はどうやって体外に出ていくのかといったら、腎臓で濾過ろかされて「尿」として排泄はいせつされるのです。