初めての夫婦喧嘩

同居4年目。長男が小4になり、次男は3年保育の私立幼稚園へ入園。長男がサッカーを習い始め、森山さんにママ友ができた。

サッカー仲間の家で2カ月に一度、母親4人+子ども6人が集まり、夕飯をともにした。

その他にも母親6人ほどで集まり、定期的にランチ会をした。その度に、個々にお土産を買っていき、ランチ代とその後のお茶代で、1回で1万円以上使った。

「長男と次男、2人の発達外来受診や、スクールカウンセラーさんとの面談。療育施設に複数の相談施設。それに加えて園や学校の行事にPTAの役員も……。次男の問題行動が最も多い数年でもありました。時間の合間をぬってランチをしていましたが、夫や義両親には、“調子に乗っている嫁”に見えていたのだと思います」

そんな頃、夜のママ友会の、森山さん主催の番が回ってきた。小4と3歳児の男の子が複数集まれば、当然騒がしくなる。ついに、体が不自由な義父の逆鱗に触れてしまった。

その翌朝、夫から謝罪するよう促された森山さんは、義両親の部屋を訪れる。

「母親のくせに子どもを注意もせずに何をやっとる! 今の親はどうもならん!」

森山さんは、ひたすら土下座をした。しかし心は折れていた。

翌日から、森山さんは子どもたちを朝送り出すと、なるべく家にいないようにした。とにかく外に出て人に会い、子どもたちが帰宅するまで戻らなかった。そして再び夫の給料だけではやりくりできなくなると、また借金が始まった。

そんなある日のこと。夫に対して溜まりに溜まった不満や怒りが爆発し、森山さんは号泣しながら夫へくってかかった。森山さんにとって、本音を吐き出したのは人生で初めてのことだった。

「夫の転勤について行って、慣れない土地で子育てしてきましたが、夫はまったく協力してくれませんでした。義父に否定ばかりされる毎日は息苦しく、『私の夫である前に義両親の息子なんだ。味方にはなってくれない』と、夫への不信感がどんどん大きくなっていたのです」

夫は黙って話を聞いたあと、「俺もキミ(森山さん)と両親に挟まれて困っていた」と打ち明けた。

恐れる人のシルエット
写真=iStock.com/simarik
※写真はイメージです

このことがきっかけで、夫は家事育児に協力的になり、夫婦の絆は深まった。だが、それで借金がなくなるわけではない。

夫が理解してくれたことで心が満たされた森山さんは、新たな借金を作ることはなくなったが、すでに借金は95万円。専業主婦である森山さんにとっては、売れそうなものを売ったり、家計を節約したりしても、利息分を減らすことで精一杯だった。

「ゆくゆくはパートへ……と思いつつも、当時は次男が不登校になっており、次男から『家にいて欲しい』と言われていました。また、マルチタスクが苦手なので、パートと家事と子育てがこなせるか、自分のメンタルも心配でした」