地域の子どもを守るための学校健診

さて、私たち医師はどんな気持ちで健診に臨んでいるでしょうか。今回、SNSでは「開業医の場合は休診にしなくてはならないし対価は少ないので、仕方なく対応しているのでは」という書き込みも見られました。それはちょっと違います。確かに学校健診は短時間にたくさんの子どもたちを診察しなくてはならないため、負担が軽いとはいえません。でも、地域の子どもたちの健康を守るためにと誇りを持って対応している医師がほとんどだろうと思います。

「学校健診は、ボランティアに近い」という書き込みも見かけました。この点については地域によってさまざまでしょうから、一概にはいえません。ただ、私が診療を行っている佐久地域を一例として挙げると、学校健診業務は学校と医療機関で個別に年間契約をしていて、就学時健診、学校健診(年1回)、行事前の臨時健診等を実施することになります。金額は確かに高くはないですが、低すぎるかどうかは意見の分かれるところです。

日差しが入る教室
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児童・生徒への配慮はとても大切

ここまで医療事情や医療者の思いをお伝えしてきましたが、もちろん思春期に身体を見られたくないお子さんの気持ちは十分に理解できます。子ども時代に配慮不足で尊厳を傷つけられたという思いは、一生残るかもしれません。だからこそ私たち医療者は学校とともに、子どもたちに納得し安心して健診に臨んでもらえるよう十分な説明を行い、可能な限り配慮していく必要があります。

文部科学省は今年1月、児童生徒等の健康診断の実施にあたってプライバシーや心情に配慮することが重要であるとして、①診察時に児童生徒の身体が周囲から見えないよう囲いやカーテンなどを準備する、②児童生徒の診察に立ち会う教職員は同性となるよう役割分担を行う、③着替える場所の準備や待機人数を最小限にするなどの工夫を行う、④正確な検査や診察に支障のない範囲で着衣やタオルで体を覆うなど児童生徒のプライバシーに配慮する、などが提案されました。

さらに男女ともに同性の医師が対応できる体制を作れれば理想的かもしれません。でも、残念ながら健診業務の多くを担う開業医に占める女性医師の割合は男性医師と比べるとかなり少なく、現実的ではありません。