終戦条件があいまいなまま、戦争が終わった
しかも、驚くべきことに、日本側はこのバーンズ回答に返答しなかった。これはスイス連邦公文書館にある「日本の降伏」という公文書からわかったことだ(詳しくは『一資料で正す現代史のフェイク』第7章「日本が無条件降伏したというのはフェイクだ」参照)。
バーンズは待ちきれずに降伏交渉を仲介したスイス政治省に電話を入れたが、日本側からの回答はまだないという返答だった。そこで、耐え切れなくなったトルーマンは、「日本はポツダム宣言を無条件で受諾した」と一方的にプレスリリースして、アメリカ軍に戦闘停止を命じてしまった。
日本は日本で、8月9日に提示した条件をアメリカが受け入れたかどうか確認せず、バーンズ回答にもきちんと答えないまま、8月15日に「終戦の詔勅」を読み上げる天皇陛下の「玉音放送」を流してしまった。
アメリカが謝罪と賠償をすべき本当の理由
つまり、トルーマンは、原爆を投下したために、大統領に昇格したとき上下両院議会で宣言した「ルーズヴェルトの日本を無条件降伏させるという方針を変更しない」という公約を果たせなかったのだ。
原爆を手に入れたことによって、トルーマンとバーンズは、日本をただ降伏させるだけでなく、国体護持の条件付きではない、無条件降伏に追い込めると信じた。さらに、東ヨーロッパを支配し、東アジアにも勢力圏を広げようとしているソ連に原爆の威力を見せつけることができればもっといいと思った。だから、原爆を落としたあとで日本を降伏させようとした。
だが、結果は、ソ連の軍事行動を早め、東アジアへの拡大を許し、さらには日本を無条件降伏させるという公約すら守れなくなるというものだった。
松原議員が主張するように、日本はアメリカに謝罪を求めるべきだ。さらに、一歩進めて、賠償を求めるべきだ。
必要もない原爆を投下したことによってアメリカは広島、長崎で何十万という日本人の尊い命を奪った。それだけでなく、起きずにすんだはずのソ連の侵略まで招いてしまった。原爆投下がなければ、ソ連は侵略を前倒しすることなく、南樺太、千島列島が日本に残ったまま終戦を迎えたはずだ。
松原議員はこういった理由でアメリカに謝罪を求めるべきなのだ。