フィリピンは米国のサポートで大きく経済成長する

台湾にきわめて近いところにあるカガヤン、イサベラ、中国が実効支配しようとしたスカボロー礁に近いサンバレス、そして中国が領有権を主張している南沙(スプラトリー)諸島に近いパラワンの4カ所だ。ここに米軍が駐留して、東アジアの火薬庫になりつつある場所に目を光らせている。

フィリピンは、かつて米国の植民地だった。とはいえ、当時フィリピンは米国にとって、それほど重要な場所ではなかったのも事実で、冷戦時代においても、大きな米軍基地が2つもあったとはいえ、米国が積極的に投資を行って経済を成長させるような入れ込み方は一切していない。

しかし、これからは事情が違ってくる。前述したように、米国はフィリピンを重要な軍事拠点と考えるようになり、今後は経済面も含めて、フィリピンを積極的に経済発展させようとするはずだ。

それは第二次世界大戦後、社会主義が世界的に広まることを懸念した米国が、旧ソ連への牽制として、日本に積極的な経済支援を行い、日本経済を世界でも類を見ないほどの経済大国に成長させたのと同じだ。

その点で、フィリピンも日本と同様、今回の米中新冷戦下において、さまざまな形で米国からのサポートを受け、経済的に大きく成長するチャンスを掴んでいる可能性は高い。

ベトナムには物凄い勢いで世界のマネーが集まる

米国からの経済的支援を享受して、成長期待が高まっている国は、フィリピンのほかにもある。ベトナムだ。

ただしベトナムの場合は、フィリピンほどきな臭い話ではない。根底にあるのは米中新冷戦の影響だが、こちらはデカップリングに絡んだ話だ。

現在、ベトナムはMSCIのレーティングでフロンティア市場に位置づけられているが、今、国を挙げて、格付けをエマージング市場にしようと頑張っている最中だ。フロンティア市場からエマージング市場に格上げされれば、恐らくベトナムの株式市場に、物凄い勢いでグローバルマネーが殺到するのではないかと見ている。

ベトナムの問題点は、ドイモイ政策によって市場経済を導入してはいるものの、根本的には社会主義国家であるという点だ。

これは社会主義国家全般にいえることだが、汚職の問題が結構大きい。過日、ベトナム中央銀行を介した銀行の横領事件があり、なんとベトナムのGDPの7%にも相当する、2兆円ほどの資金が横領されていたことが判明した。その手の不透明感は否めないが、近い将来、フロンティア市場からエマージング市場に格上げされた時のポテンシャルの高さには期待したいところがある。