ロシア系住民に示すべき3つの選択肢
日本が北方領土の返還を平和裏に実現したいのであれば、このロシア系住民問題の解決にきちんと道筋をつけるべきである。具体的には次の3つの選択肢をロシア系住民に用意するべきだ。
①「ロシア国籍のまま、日本人と同じように年金や医療を受けられる在留資格を取得する」
②「ロシア国籍を棄てて日本国籍を取得する」
③「日本政府が費用を負担して、ロシアを含め好きなところに引っ越す」
この3つの選択肢を与えれば、プーチン大統領が「日本政府は俺の悩みをわかっているじゃないか」と思うことは確実だ。
事実、バルト三国(ラトビア、エストニア、リトアニア)には旧ソ連時代に多くのロシア人が入植したが、立場が変わった現在、彼らが迫害されていることにプーチン氏は強い怒りを見せている。日本としては、その点を汲むことが重要である。
平和条約を結ぶことで、日本にとってロシアの軍事的脅威は減るだろうし、中国や北朝鮮に対する抑止力にもなるだろう。そしてアメリカとの関係を従来の追従的なものから変えていくきっかけにもなる。
日本は別にアメリカと仲悪くなる必要はないが、アメリカべったりの結果、アメリカの敵まで自動的に日本の敵となるような愚は避けたい。
「観光立国省」が日本経済を救う
もう1つ、日本として2024年中にぜひとも取り組みたいのが観光立国への本格的なシフトである。
言うまでもなく、旅行先として日本は世界中から非常に人気がある。訪日外国人旅行者数は2023年にコロナ前の水準を上回り、2030年には6000万人と推定されている(図表①)。「コロナが明けたらどこに行きたいですか?」というアンケート調査でも多くの国で日本が1位に選ばれている。
訪日外国人旅行者6000万人が実現すれば、その経済規模は約50兆円だ。まさに日本の成長産業である。「安全で、交通の便も良く、食事も美味しい」という日本が持つ魅力で約 50兆円、つまりGDPの10%が新たに加わるのだから、「観光立国省」を新設し、専任の大臣を置くべきだ。
すでに国土交通省の下に観光庁が置かれているが、こちらはただの外局で、2024年度の予算はわずか500億円しかない。
そうではなく、世界各国に置かれた日本大使館などの在外公館をインバウンド誘致の拠点として活用できるほどのパワーを持つ「観光立国省」に格上げすれば、日本の観光産業の規模は50 兆円以上になる。観光立国こそが、日本経済を「失われた30 年」から救う処方せんとなるのだ。