住民票を移すだけの見せかけ同居はNG

小規模宅地の特例によって相続税は1000万円以上変わることもあります。すると「実際に同居していなくても、住民票だけ両親と一緒にしておけば認められますか?」と質問をされることがよくあります。結論から言うと、これはNGです。住民票のみ一緒でも、それは見せかけの同居にすぎませんので、特例を使うことはできません。

また、こう言うと「税務署が見せかけの同居かどうか分かるのですか?」という質問をされます。税務署が調べようと思ったら最後は、近隣住民への聞き込み調査まで徹底的にやりますので、油断は禁物です。実態として同居かどうかを見定めるにあたり税務署は次の項目を見て総合的に判断します。

・住民票
・郵便物(公共料金の領収書、民間企業からの請求書など)
・勤務先からの通勤手当の受給状況、会社への届け出住所
・通勤・通学定期
・子供の学校(公立の場合、近所の学校に通っていないとおかしい)
・相続人の通帳(住宅ローンの支払いがあるか、どこのATMを使っているか)
・大型家具の搬入日
・水道光熱費の使用量が通常通りか
・近隣住民への聞き込み(実際に住んでいたかどうか)

税務署はこれらを確認して総合的に判断しますので、住民票を親と一緒にしておくだけの見せかけの同居では、一発でバレてしまいます。

それでは、親の介護のために実際に亡くなる直前まで同居していた場合はどうでしょうか。結論は、ケースバイケースです。

親の介護で同居する場合、元の家は売却か賃貸に

小規模宅地の特例には、相続後に10カ月間は住まなければならないという条件があります(配偶者が相続する場合、この制限はありません)。親の介護のためだけに同居していた場合は、親が亡くなったら実家に住み続ける理由がありませんので、相続後に10カ月間は住まなければならないという要件を満たせません。

仮に10カ月間実際に住んだとしても、小規模宅地の特例を使うために住んでいたのであって、10カ月経過後も引き続き住まないのであれば税務署から認められない可能性が高いのです。

この特例は、相続税を払うために自宅を売却して、住む所がなくならずに済むように作られた優遇措置であるため、元から家を持っている相続人は使えません。

親の介護のために同居していた相続人がこの特例を使うためには、元々住んでいた物件を手放すか、もしくは賃貸に出しましょう。このいずれかをやっておけば、親の実家が主たる住居である証拠となりますので、小規模宅地の特例を使える可能性が高くなります。