アマゾンは「事業者の利益よりも消費者の利益を優先」

消費者による商品レビューや専門家によるレビューなどは、BtoB市場では敬遠される傾向にある。レビューが、事業や商品価値の毀損につながる可能性があるからだ。一方でBtoC市場では、事業者側ではなく客観的な視点からのレビューが消費者を惹きつける。こうしたBtoBにおける事業者の利益とBtoCにおける消費者の利益相反は、EC業界では日常茶飯事だ。

これに対してアマゾンでは、「BtoBの事業者の利益よりもBtoCの消費者の利益を優先する」という社内ルールがあるという。「『2年で会員120万人超』チョコザップの快進撃はどこまで続くのか…既存ジムとの収益モデルの決定的な違い」の稿でも言及したが、「地球上で最も顧客中心主義の会社」と掲げる徹底したカスタマーセントリック(顧客中心主義)が、EC業界でアマゾンが強い大きな要因だと筆者は思っている。

一方、マクアケの決算報告資料には、事業者とのコラボレーションなどプロジェクトに関する情報は多数掲載されている。それと比較すると、購入者(消費者)へのサービス拡充に関する情報が圧倒的に少ない。

短期的な売上を確保するためにBtoB市場を重視するのは間違いではないが、BtoC市場にもきちんと向き合い、カスタマーエクスペリエンスを向上させてリピーターが増えることも目指していく必要がある。消費者はもっと事業者と交流したいだろうし、「応援コメント」だけでなく購入後の商品レビューなども投稿したいはずだ。

消費者目線での「アタラシイ」を探す

マクアケは「世界をつなぎ、アタラシイを創る」というミッションを掲げている。

23年8月に国立科学博物館が行ったクラウドファンディングでは、5万6000人余りから目標金額を大きく上回る9億2000万円の支援が集まり、話題となった。これは消費者から見た「アタラシイ」を掘り起こした事例なのではないか。日本には博物館や美術館などが6000カ所近くある(文部科学省 令和3年度社会教育統計より)。たとえば、クラウドファンディングではそれほど支援が集まらない博物館に対して、マクアケができることはあるだろう。

BtoBとBtoC、あるいは企業間、地域、社会など、マクアケがつなぐことができる場所はまだまだある。そして0次市場におけるテストマーケティング的な「アタラシイ」だけでなく、消費者から見た「アタラシイ」はもっと掘り起こせる。

ミッションに立ち返り、事業者だけでなく消費者を見て、双方をつないでいくことが、マクアケの次のステージの“幕開け”になることを期待する。

【図表8】ミッションから考える「Makuake」の在るべきポジショニング
筆者作成
(構成=野上勇人)
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