「自分で考え、工夫して乗り越える」という経験の積み重ね

私自身、子供の頃から科学に興味を持っていました。小学校低学年では、親が毎月買ってくれていた子供向けの科学雑誌をむさぼるように読んだものです。

親にねだって、アルコールランプや試験管などの実験セットを買ってもらい、酒石酸ナトリウムと重曹でサイダーを作っては友達にも飲ませ、悦に入ったりしていました。小学校高学年では、学研の学習雑誌「科学」の付録、実験キットにワクワクしながら取り組んでいました。当然、開成では理化学部に所属し、大学でも化学を専攻しました。

開成高校の校長・野水勉さん
撮影=市来朋久
開成高校の校長・野水勉さん

その後の研究生活の中では、なかなかうまくいかないことも多くありましたが、それを乗り越えることができたのは、好きだった世界であることに加え、子供の頃から「自分で考え、工夫して乗り越える」という経験を積み重ねてきたからです。

本来、小学生くらいの子供は、好奇心の塊です。見るもの、触れるものに次々と興味を持ちます。その好奇心をうまく引き出したり、刺激したりしてやれば、自分から知識を得ようとし始め、得た知識をもとに自分で考え、自分で行動することを始めます。

子供の好奇心をもっとも揺さぶるのは、「遊び」ではないかと思います。特に「外遊び」です。土に触れ、草木に触れ、昆虫に触れ、走って転んで泥だらけになること。私も小学生の頃には、近所の林に出かけてカブトムシやクワガタムシを捕まえたり、建築現場の砂利の中から結晶が美しい石を探し、図鑑で調べたりしていました。その経験が科学への好奇心を高めていったのです。