紫外線による悪影響は白人と日本人では違う

きれいな肌を保とうと、紫外線対策として日焼け止めを塗っている人は多いと思います。しかし、これは大きな誤解です。紫外線は肌にとって決して悪者ではないからです。

もともと、紫外線予防のキャンペーンが始まったきっかけは80年代にまで遡ります。82年に南極観測隊に参加していた日本人の気象庁の隊員が上空オゾンの急減を発見したことから、以降皮膚がんをはじめとする紫外線による健康の悪影響に関心が高まり、紫外線を避ける風潮が強くなりました。

紫外線予防キャンペーンの一番の目的は、皮膚がんを防ぐことでした。しかし、紫外線を浴びるから皮膚がんになるわけではありません。たしかに白人はメラニン色素が少ないため、皮膚がんを発症するリスクが高いと言われています。

一方で日本人の皮膚がんの発症率は、皮膚がんの発症リスクが高いとされているオーストラリア人の100分の1にすぎないのです。しかも、全世界の皮膚がん発症率を見ると、必ずしも紫外線の強い赤道に近い国々が高いとは言い切れません。

さらに言えば、皮膚がんのうち日本人にもっとも多いのは基底細胞がんですが、このがんはほかの臓器に転移することはほとんどなく、命に関わるものではありません。命に関わる皮膚がんはメラノーマ、別名「悪性黒色腫」です。メラノーマは日光に当たることがない足の裏や足の爪に発生するがんで紫外線とは無関係です。

皮膚がんに関する誤解と同様に、紫外線による日焼けがシミやしわをつくるというのもウソです。長年にわたって紫外線を浴び続けていると、露出していることが多い顔や首、手の甲などにサンタンと呼ばれる皮膚の色が濃くなる現象が起きて、皮膚が変化します。また「光老化」と言って、同じく長期間の紫外線暴露によって皮膚の弾力性を保っているコラーゲンやエラスチンという弾性繊維が減少し、シミや深いしわをつくると言われています。

しかし、中年以降の女性に多かれ少なかれできる「肝斑かんぱん」と呼ばれるシミを見てみると、おかしな点に気がつきます。もしも、紫外線がシミの原因であるならば、紫外線をもっとも浴びている額や鼻にシミが多くできるはずです。ところが、実際には肝斑など女性の顔のシミの多くは、頬骨のところや目尻とこめかみの間にできているからです。

頬骨の部分は、骨があることで皮膚が下から押されると同時に、洗顔のときにもっとも擦られる場所になります。つまり、シミの原因は紫外線ではなく皮膚の擦りすぎにあるとも考えられるのです。