なぜ「1年以内に決着」は響かなかったのか

9日の大村氏の出陣式で、筆者がいちばん驚かされたのは、大村氏がリニア推進の立場を明確にして、リニア問題の早期解決に関する「5つの約束」をわかりやすいパネルに示したことである。

リニアに関する5つの約束をパネルにした大村氏
筆者撮影
リニアに関する5つの約束をパネルにした大村氏

「流域の声を反映させる」「大井川の水と環境を守る」「国の関与を明確にする」「静岡県のメリットを引き出す」の4つの約束を掲げ、5つ目が「(その4つの約束に対して)早期に解決する。1年以内に結果を出す」と自信たっぷりに述べていた。

静岡県知事選の最大の焦点となったリニア問題に対して有権者にひと目でわかる解決策を示すのは、選挙戦略としては当然なのだろう。

また静岡工区の早期着工を目指す自民党を代表する候補だから、「1年以内に結果を出す」の約束は、至上命令だったのかもしれない。

川勝氏の退場とともに、13日に開かれた県地質構造・水資源専門部会では、リニア問題責任者を務める副知事はじめ静岡県職員は、これまでとは一転して、JR東海の主張を丸のみする方向を示した。

つまり、大村氏の主張通りにとにかく早期解決することへ舵を切った。県庁幹部OBたちが事務所に入ったことで、静岡県庁が一丸となって、大村氏の支援に回ったことは明らかだった。

岐阜県の「水枯れ問題」が選挙期間中に発生

しかし、そんなにうまくいくのか疑問を抱いた。

川勝氏が大風呂敷を広げたリニア問題はあまりにも複雑怪奇となっていたからだ。

リニア問題を解決させるためには、知事就任後に、正確な情報を基に、これまでの議論が何だったかをちゃんと理解するところから始めるべきであると、筆者はこれまで何度も強調してきた。

そんな中、筆者の懸念が現実のものとなる「事件」が起きた。

選挙戦真っ只中の16日、JR東海の丹羽俊介社長が岐阜県瑞浪市のリニアトンネル工事による水枯れ問題を取り上げたのだ。