販売店も「夕刊をやめてほしい」と思っている

「新聞の夕刊は、惰性で続いているだけにすぎません」

朝日新聞の販売管理部長を務めた畑尾一知さんは、そう指摘する。畑尾さんは、2018年に新潮社から出版した著書『新聞社崩壊』(新潮新書)の中で、未来の新聞がとるべき施策の一つとして「夕刊廃止」を挙げている。

「紙の新聞は、速報性を重視しなくていいと考える。現代人の生活習慣に照らすと、新聞閲読は一日一回、朝刊だけで十分である」

このように顧客ニーズの観点から夕刊不要論を唱えているが、新聞販売店にとっても夕刊はメリットよりもデメリットが大きいとみている。

「現在の人手不足の状況からすると、夕刊を配達するための要員を確保するのも大変です。朝刊と違って折込広告がほぼないですし、販売店は夕刊がないほうが助かるでしょう」

新聞販売店
新聞販売店(写真左=anna Hanks/CC-BY-2.0/Wikimedia Commons

「5年以内には夕刊はなくなる」

読者の多くが夕刊は不要だと考え、販売店の負担も大きいのならば、いずれ夕刊はなくなっていくだろう。それはいつなのか?

知り合いのメディア関係者約40人にアンケートをとってみたところ、過半数が「5年以内に夕刊がなくなると思う」と答えた。

【図表】日本の新聞から「夕刊」がなくなる日は来るでしょうか?
筆者作成

畑尾さんも「夕刊がなくなる明確な時期はわかりませんが、首都圏以外の地域はどんどんなくなっていくでしょうね」と予想する。

メディア激動研究所長の井坂さんは「朝日新聞関係者の話を総合すると、2030年までにすべての夕刊を廃刊する方向で調整が進んでいるようです」と語る。地方紙だけでなく、全国紙も夕刊をやめる日が迫っているのかもしれない。

一方、朝日新聞の広報部に「2030年までにすべての夕刊を廃刊するという状況なのか」と問い合わせると、「ご指摘のような状況は一切ありません」という回答だった。

「朝・夕刊セット」は日本独自のスタイル

実は、日本では当たり前とされてきた「朝・夕刊セット」という新聞の購読スタイルは、海外ではほとんど例がないという。

欧米にも、フランスのル・モンドのような夕刊紙は存在するが、「夕刊だけ」を発行しているのであって、同じ新聞社が朝刊と夕刊の両方を発行しているわけではないのだ。

日本の新聞業界が育んできた「朝・夕刊セット」という独自のスタイルが、国内から消える。その日が刻々と近づいている。

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