半世紀前から「夕刊離れ」はあった
実は、夕刊離れはいまに始まったことではない。半世紀前の1970年代にすでに問題が顕在化していた。
朝日新聞の調査研究室が1975年にまとめた「単売現象にみる夕刊の問題点」という社内報告書が手元にある。その冒頭にこんな言葉が記されている。
「ニュースや解説は朝刊から夕刊へ、さらに翌日の朝刊へと“継続的・連続的”に報道される。それを、途切れ途切れに、朝刊だけで受け取っている単売読者は、私たち新聞人にとって、まことに我慢のならぬ存在に映る。報道の使命という観点からも、好ましい現象ではない。その単売が、すさまじい勢いでふえている」
当時の朝日新聞は、朝刊と夕刊をセットで購読する読者が大半だったが、夕刊を取らずに朝刊だけを取る読者が増加していた。それを「単売現象」と呼んで、原因を詳細に分析したのが、この社内報告書だ。
なぜ「単売現象」は起きているのか。新聞を届ける販売店の事情として、次のような点が列挙されていた。
(1)読者が夕刊を読みたがらない
(2)他紙が単売で拡張してくるので、対抗策として単売で売る
(3)新聞代の値上げがひびいた
(4)地域的に条件が悪く、夕刊配達にコストがかかりすぎる
(5)朝刊も含め、若い層に「新聞離れ現象」が広がっている
このうち、(2)を除く4点は現在でも「夕刊離れ」の原因になっていると考えられる。
「朝刊で間に合う」は昔から言われていた
(1)(3)(5)は読者側の事情だが、その点については次のような理由が多かったという。
(a)朝刊だけで間に合う
(b)テレビで間に合う
(c)経済的な事情
(d)忙しくて読む時間がない
おそらくいま調査すると「ネットで間に合う」がトップに来るのだろうが、「夕刊を取らない理由」は、昔からあまり変わっていないといえそうだ。
逆にいえば、半世紀も前から「夕刊離れ」が起きていたにもかかわらず、いまだに夕刊が配り続けられていることこそ、驚くべきことなのかもしれない。