ネットニュースも見出しが混在
検索すると、こんな見出しの並びを発見した。
これは、19日18時30分ごろにヤフーニュースで「産まずして何が女性か」を検索したら表示された画面だ。やっぱり最初は「産まずして」の見出しだったのだ。
ここには四国新聞の記事や京都新聞のX投稿が出てきている。つまり、地方紙が通信社からの記事配信を受けてそのまま「産まずして」と掲載したのだ。ところがそれぞれの記事を開くと「うまずして」に修正されている。京都新聞のX(旧Twitter)投稿のリンク先も同じだ。Xと見出しが違う。
「産まずして何が女性か」と上川陽子外相 | 京都新聞 https://t.co/XwgxTTuWAu
— 京都新聞 (@kyoto_np) May 18, 2024
しかも、それぞれの記事には何時に修正したなどとも書いていない。なにをやってるんだろうか、この人たちは。
ニュースの見出しが「炎上」を作り上げた
この記事を地方紙に配信した通信社は、共同通信だ。
共同通信は大きなニュースが起きると100字前後の「番外」と呼ばれる速報を出すそうだ。それから15分ほどして「一報」と呼ばれるニュースを配信、その後要素を加えていって「本記」として完成させる。
この場合、番外で「産まずして」と表記し、一報から「うまずして」と変更したと見て間違いなさそうだ。私は長年言葉に携わってきた者として、当初は意図的に「産まずして」と漢字を使ったと推測する。実際、共同通信の英語版記事を配信する同社国際部も、産経新聞の取材に対して「一連の発言は『出産』を比喩にしたものと考えられます」という見解を示している。
〈参考記事〉
外相「うまずして」英訳記事、男性に言及あり「明示なくても『出産』比喩」 共同通信回答(5月21日、産経新聞)
「産まずして何が女性か」じゃないと失言にならないからだ。この漢字だからこそ直感的に「大失言だ!」と受け止める。だからものすごい勢いで記事が広まったのだ。地方紙だってこぞって即掲載しただろう。こんなにおいしい失言もないぞと。だからこの記事が拡散されるスピードは早かった。
「上川外相が子どもを産まないと女性じゃないと言った!」と世間は受け止め、今の自民党への批判ムードも相まって炎上した。最初に「うまずして」だったらあれほどの騒ぎにならなかったはずだ。見出しを見た瞬間、「子どもを産まずして」との意味と受け止めたから爆速で広まった。
そして多くの人は見出しだけ見て判断してしまう。かくて、上川外相が意図していないことが言ったことになった。見出しが事実を作り上げたと言ってもいい。