なぜ見出しを変えたのかの説明はないまま
この時、私は慌ててヤフーのオーサーコメントを書き、「この記事は実際に私が見た会議と違う」と訂正した。コメントとしては珍しく10000以上の「参考になった」をもらったが、焼け石に水。世の中の多くが、「NHKはスマホから受信料を取ろうとしている」と誤解した。
私が共同通信の「前科」と言うのはこのことだ。そして起こったことが似ている。「総務省がNHKのネット受信料を取るための会議を始めた」という、起こってないことを起こったように書いた。今回も、上川外相は「子どもを産まずして何が女性か」とは言ってないのに言ったことになった。
しかも見出しの改ざんがあったのに何のアナウンスもない。配信を受けて記事にした地方紙も、説明せずに見出しを変えたのは同罪だ。しかもお粗末なことにネットには「産まずして」がしばらく残っていた。
「スクープ」のようで中身の薄い速報
私はかねがね、共同通信のネットでのニュース配信のやり方に疑問を持っていた。先述の「番外」や「一報」の段階の記事は、本文の情報が薄い。見出しを見て本文を読んでも具体的な内容が見えない。
ところが、共同通信が短い見出しでニュースを出すと、その時点でスクープ記事のように見える。内容が見えないことが逆にスクープらしさを助長する。実際にそんな形で出るスクープ記事は多いのかもしれない。だが過去に何度も、私が取材するメディア業界について「これはニュースと言えるか?」と思ってしまう内容を共同通信はニュースにしていた。すると業界初のスクープに見えてしまう。
このやり方は、ネットの時代に合わなくないだろうか。今回の一件がまさにそうだ。昔は、そういう出し方でも新聞に載るまで時間がかかった。だがいまは、即座に各紙各媒体が「番外」や「一報」を見て記事にする。それが、「見出し詐欺」を拡散してしまったのだ。
今回の騒動では、マスメディアに「失望」を感じた人は多いと思う。ここで見直さないと、同じようなことをまた起こしてしまい、マスメディア全体が見放されてしまいかねない。ネットでのあり方を、NHKだけでなく全ての既存メディアがもう一度見直す時だと思う。