NHKネット受信料をめぐる報道でも…
私は放送業界の今後がどうなるかを熱心に追っている。そのテーマは「総務省の有識者会議」で議論される。2022年9月に「公共放送ワーキンググループ」というNHKの今後を議論する有識者会議がスタートし、私はWEBで傍聴した。最初の回だったので、有識者の挨拶で終わった感がある。
その時に総務省が出した検討項目は「インターネット時代における公共放送の役割や在り方、ネットでの民放との関係や財源、受信料制度」と整理されていた。有識者たちは会議への抱負を述べながら、「ネット端末を持っているだけで受信料を取る制度にはすべきでない」とほぼ全員が明言していた。
一人の有識者が、同じことを言った上で、「ネットでも公共放送を見たいと言う人から受信料を取ることは検討していい」と発言した。その会議の資料がこれだ。受信料は最後のテーマとして表記されている。
会議が終わりしばらくしてネットを開くと、共同通信の記事がヤフートピックス入りしていてネットが大騒ぎになっている。「ネット時代の受信料検討へ 事業拡大の是非も議論」という見出しに驚いた。私が傍聴していたのと同じ会議の記事とは思えない。「受信料検討へ」と書くと、まるでネットで受信料を取る目的の会議に見える。「事業拡大の是非」なんて検討項目に入っていない。
「スマホから受信料徴収」と誤解が広がった
この記事は巧妙にできていて、嘘は書いていない。だが、一部を誇張してあり実際の会議と違う印象を与えようとしている。誤解を与える「意図」があると言っていい。さらに姑息なのが記事のこの部分だ。
「会合では、テレビを持っていなくてもスマートフォンなどで積極的に放送を見る人については『負担を議論していく必要がある』との意見が有識者から出た」
有識者たちが「スマホを持っているだけで受信料を取るべきではない」と発言したことはまったく書かれていないのだ。「ネットの時代の受信料検討へ」の見出しの後でここを読むと、「スマホから受信料を取るための会議」と早合点してしまう。それで炎上していたのだ。