50代の転職市場の難関をどう超えるか。中高年のセカンドキャリア塾を運営する大桃綾子さんは「無償で働く『プロボノ』経験など、“転職以前のレッスン”の場が重要」という――。

人材不足解消へのあの手この手

中高年のセカンドキャリアの転職市場は、年々、注目度を増しています。

転職・副業・プロボノをはじめとしたセカンドキャリアをサポートする会社を始めてから5年になりますが、創業当時は、シニアの雇用に前向きな企業を見つけるのも難しいほどでした。

2021年の高年齢者雇用安定法の改正を機に、ここ数年で、大手企業による50代社員への投資という研修導入が増え、同時に人手不足を解消したい地方企業からも、人材の問い合わせが重なるようになってきたのです。

とはいえ、最初から地方移住は難しい。2014年に「地方創生」を掲げた国も、当初は転職・移住を推進していましたが、副業・関係人口に拡大したのが2018年。そして2022年頃から、ボランティアで地域の企業の課題解決を後押しする「プロボノ」に広がり、地方企業にとってもそのメリットが理解されつつあります。プロボノに参加するシニアにとっては、転職・副業前の練習機会にもなり、人手不足を解消するためのあの手この手が、今や、急速に成長しつつあるのです。

同時に、転職・副業はまだまだ厳しい市場でもあります。前回も述べましたが、年代を重ねるごとに転職率は低下し、50代は3.4%です。

“転職・副業以前のレッスン”の場を

「100社申し込んで、3社面接に呼ばれたらいいほうだ」

50代で転職を志した人は、エージェントから一度はこう言われるそうです。いわば100本ノックのような世界です。

思い悩む中高年男性
写真=iStock.com/Kazzpix
※写真はイメージです

聞いただけで心がくじけそうですが、これはあくまでも初心者、つまり人生初めての転職活動だから起こりがちなのです。

言ってみれば、なんの練習もなしにマラソンを走るようなもので、転職・副業についてリサーチや戦略を立てずに挑むからキツくなるのです。

私たちのセカンドキャリア塾ではプロボノ、すなわち「大人のインターンシップ」という“転職・副業以前のレッスン”の場を用意し、副業を望む中高年の方々と、即戦力を求めている地方企業の方々を結びつけています。ここ数年でのもっとも大きな変化は、年齢の若返りです。数年前は、定年間近の50代後半の男女が主だったのに比べ、最近は50代前半、つまり氷河期世代の人々が、セカンドキャリアを考える層に入ってきました。ゆえに競争が激化しているともいえる。だからこそ、戦略が必要なのです。やみくもに100本ノックをしてはいけません。