試験と書類、表示の文言がセットのビジネスモデル

消費者庁は、措置命令の対象となった2つの商品と同一成分で、科学的根拠が同一であるという他の商品88件についても回答を求めており、60件は撤回され、残りも撤回の予定です(2024年4月30日現在)。

機能性表示食品制度においては、原料メーカーが開発業務受託機関(CRO)に依頼し試験や研究レビューを行い、書類の書き方から機能性の表示の文言までセットにして、健康食品事業者に売り込み、その原料を使った機能性表示食品が各社から届出される、というビジネスモデルが確立しています。そのため、科学的根拠が同一の製品88件がいっせいに撤回へ、ということになるのです。

京都大学の研究グループも24年2月、論文で食品の機能性研究の質の問題を明らかにしています。CROにより実施された臨床試験の論文およびそれを基にした広告に、優良と誤認させる要素が多く含まれている、というのです。

論文で取り上げられた試験の多くは、機能性表示食品の根拠となっています。京大グループは「国、あるいは消費者庁が、機能性表示食品について規制の見直しを検討すべきであることが示唆されました」と広報しています。

消費者庁は制度にメスを入れられるか?

多くの消費者は、こうした実態に気付かぬまま、国の制度だからと機能性表示食品を信頼していたはずです。消費者庁は数年前から健康食品に厳しく対処し、景表法違反などで次々に措置命令を出していました。昨年ついに、機能性表示食品のエビデンス不足にも対処したので、私は、その後も制度にメスを入れるもの、と期待していました。ところが、急に低調に。その挙句、紅麹サプリメントの健康被害が発生した、というわけです。

消費者庁は今後、制度をどうするつもりなのでしょうか?

※記事は、所属する組織の見解ではなく、ジャーナリスト個人としての取材、見解に基づきます。

<参考文献>
機能性表示食品・蹴脂茶
内閣府食品安全委員会・蹴脂茶評価書
内閣府食品安全委員会・新開発食品専門調査会第93回、101回、102回会合議事録
消費者庁機能性表示食品の届出情報検索で、機能性関与成分名=エノキタケ由来脂肪酸で検索
消費者庁・機能性表示食品について

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