“小さなNOを言う”練習を積み重ねる

私は弁護士として、離婚問題を相当たくさん担当してきました。そのうえで、離婚に至る夫婦にはコミュニケーションの問題があると実感しているところです。

普段のコミュニケーションがうまくいかないと、お互いにNOと言えないのだと思います。

NO
写真=iStock.com/NicolasMcComber
※写真はイメージです

NOを伝えるということを、とても難しく捉えている人が多いように感じます。私の依頼者でも「NOを言うこと=わがまま」と感じている方がたくさんいました。そのためNOを言えずにストレスをため込む。それが積み重なって、ついにはとても大きなものを突きつけてしまうということに発展するのだと思います。

NOを言うのが難しいということは、裏返していうと、YESしか答えが用意されていないということになりますよね。答えがYESしかない状況というのは、不自然なことじゃないですか。そう考えれば、NOを言うことは決してわがままではないとわかってもらえると思います。

日頃から“小さなNOを言う”練習を積み重ねていけばいいのではないでしょうか。NOを言うのにもトレーニングや慣れが必要です。

一方で言われる側も、うまく受け止めるためのトレーニングや慣れが必要です。NOと言われたからといって、それは人格を否定されたということではないのです。ある物事があって、それに対して嫌だということを伝えられただけです。それを理解できないと、NOと言われたときの反応が過剰になってしまいます。あるいは過剰な反応をすることで、次のNOを言わせないようにするのです。

お互いの関係性も重要です。

たとえば職場で上司から言われたことについては受け入れられても、目下の人から同じことを言われると我慢できないということがあるでしょう。それと同じように他の人から言われても受け入れられるのに、特定の人物に言われると耐えられないということがあります。夫婦関係のように、近い人からNOを言われることは嫌だと感じる人が多いのです。

そのためにも夫婦間では、日頃のコミュニケーションが大切なのです。

さてNOの伝え方ですが、端的に「嫌です」と言うだけではなく、どうして嫌なのか、なぜNOを言うのか、その理由をきちんと伝えることが大事です。NOを伝える際には、自分が嫌だと感じる理由をしっかりと言語化したうえで、相手を傷つけないような言葉を選択することが大切だと思います。

法律の世界では、常に、どういう事実がどういう理由で法律の条文に当てはまるのか、ということを考えているわけです。私がその思考に慣れているということもあるのですが、理由付けをしっかり言語化して伝えることは、日常生活においてもとても役に立っていると感じています。

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