昭和には良くも悪くも「ゆるい雰囲気」があった

また、良くも悪くも昭和には「ゆるい雰囲気」がありました。ろくに休日もなく、長時間働くのが普通。連休中に家にいると突然呼び出され「連休だろうが会社に来るのが当たり前だろう」と怒鳴られる。新聞社だと大事件が起きると必ず出勤しなきゃいけないので、新婚旅行を途中で切り上げて職場に戻った先輩もいました。そういう理不尽が何の不思議もなく、受け入れられていた時代でした。

一方で、仕事の成果など細かい数字は大して求められず、喫茶店に行くと営業マンが昼寝したりマンガを読んだりしていた。見た目の労働はきついけど、あちこちで手を抜きまくっていたのが昭和の働き方です。多少手を抜いても怒られなかったし、「遊びこそ仕事につながる」という発想もあった。

だから「できるだけ遊べ」と盛んに言われました。だんだん慣れてくると、「手の抜き方」がわかってきて、仕事の最中に飲みに行ったり、パチンコ屋に行ったりという人もいましたね。

仕事と遊びの境目が曖昧だった昭和の働き方

ところが、今はそういうわけにはいきません。会社側としては労働時間を適切に管理して、働いている時間にだけ給料を支払う。これは経営的には確かに正しいのですが、会社全体の将来的な成長や個人の成長を考えると、切り分けすぎるのもどうかと思うのです。

ワークライフバランスが大切だと盛んに言われますが、私はあんまり意味がないように思っています。むしろ「ワークライフインテグレーション」(ワークとライフを統合して相乗効果を生む)のほうがいいのではないかと考えています。私のような仕事だとあらゆるものがインプットになり、それがアウトプットにつながります。週末に山登りに行く行為は単なる趣味ですが、山登りに行って感じたことや、そこで得た人間関係、見聞きしたものが、アウトプットにつながるわけです。

昭和の働き方は、仕事中に昼寝をしたり遊んだり酒を飲んだり、あちこちで手を抜いて、ある意味ワークライフインテグレーションを実現していました。令和はワークライフバランスなど合理化を進めすぎて、遊びや余裕がなくなった。どんな仕事でも、アウトプットするにはインプットが大事です。そのインプットは必ずしも机に向かったり、会議室で得られたりするものばかりではないはずです。