中国で優先的に救済されるのは政府に近い企業や団体

民主主義の国であれば、経済危機に対処する際、どういうプライオリティ(優先順位)で救済策を実施するかについて透明性を担保しないといけない。救済策を実施する際、まずは関連の法律にのっとって行う必要がある。そのなかで、弱者を救済しなければ、政治家は選挙に負けてしまう可能性がある。民主主義国における経済危機への対処は時間がかかるものの、必ず合法的に行われなければならない。

それに対して、中国は民主主義国ではなく、選挙も実施されていない。したがって、救済策の透明性がほとんど担保されていない。弱者が優先的に救済されることも期待できない。結論を先に言えば、中国で優先的に救済されるのは政府にもっとも近い企業や団体であろう。その次に、救済しなければ政府にとって大きなトラブルになると考えられる企業や個人が優先的に救済される。今や、不動産バブル崩壊によって途方に暮れている個人は無数にいる。多くの地方で「マイホーム難民」が発生し、地方政府に救済を求めているが、その地方政府はまったく対応してくれない。

中国は日本のバブル崩壊に学ばなかったのか?

3年前からデベロッパーのデフォルトは相次いでいるが、中国政府(中央政府)はどこまで救済するか迷っているはずである。救済しなければ、バブル崩壊の影響が一気に広がってしまい、深刻な社会不安を引き起こす恐れがある。しかしながら、救済しようとしても、すべてのデベロッパーを救済するほどの財源がない。中国政府が迷っているあいだにも、時間はどんどんロスされている。おそらくバブル崩壊への対処について考えなければならない変数は、一に責任、二に影響であろう。デフォルトを引き起こしたデベロッパーには、責任を問わなければ不公平になる。かと言って、全く救済せずにみてみぬふりすると、バブル崩壊の影響は広がってしまう。

中国人民銀行の本社
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中国人民銀行の本社。2023年(※写真はイメージです)

筆者は講演などの場でよく、中国は日本のバブル崩壊の後処理について勉強していないのかと質問される。答えは簡単である。中国は勉強していると思われるが、日本のバブル崩壊よりも中国の状況のほうがはるかに複雑なのだ。だからこそ中国政府はどのように対処すればいいかを躊躇ちゅうちょしている。