大手デベロッパーは共産党中枢と目に見えない人脈を持つ

しかも、中国は民主主義国ではないため、政府は多くの利益集団とバーゲニング(交渉)しないといけない。たとえば、政府がデベロッパーの経営に不正があると察知していても、単純に法に基づいて対処できないケースが少なくない。大手デベロッパーの関係者は、共産党中枢と目に見えない複雑な人脈を持っていることが多い。ふいにデベロッパーを処罰すると、返り血を浴びることがあるのだ。

反対にほかの政府機関から当該デベロッパーを救済するよう圧力をかけられることも考えられる。したがって、債務超過に陥ったデベロッパーを処分する際、資産査定よりも重要なのはその複雑な人脈を調べることだ。いきなりその経営責任者を拘束して裁判にかけた場合、政府にとって都合の悪いことを語られる心配がある。

深セン、中国の住宅のドローンビュー
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また現在、大手デベロッパーが相次いでデフォルトを起こしているため、中国政府はそれらを包括的に処理する政策を模索する必要がある。すなわち、どのデベロッパーを救済するか、あるいは救済しないかを線引きする作業が重要になっている。しかし、李強りきょう国務院(政府)は2023年3月に始動したばかりで、政策の決定と実行について模索しているゆえにスピード感がない。

貯蓄率の高い中国人にとって不動産は良い投資先だったが……

2023年に入ってからの中国経済は、予想外に景気回復の力が弱く、L字型成長になっている。これまで多くの地方政府は、不動産バブルのさらなる膨張を警戒して需要を抑制する政策を講じてきたが、2023年からは需要抑制政策を撤廃ないし緩和する方向へ方針転換している。地方によって内容は異なるが、具体的に、①住宅購入制限の完全撤廃、②住宅購入制限の部分的緩和、③住宅ローン借入制限の完全撤廃、④住宅ローン借入制限の部分的緩和、⑤住宅価格制限の緩和などである。

そもそも中国は貯蓄率の高い国である。金融市場を管理する法制度が整備されておらず、安心して投資できる金融商品も少ないからだ。中国では金の現物を買って家においておく伝統があるが、その金を大量に買って貯め込むことは非現実的である。結局、富裕層の多くは不動産投資を選好することになる。2戸目、3戸目とマンションを購入して、値上がりするのを待ってから売るというもっとも古典的な投資を手掛けてきた。こうしたなかで不動産価格は急騰してバブルとなった。