無知になりいくつかの質問をできるか

そして、人には受けた好意にお返しをしたくなる「好意の返報性」があります。だから、あなたが出会う人のことを好意的に見れば、質問は自然に増え、相手からも好かれます。

相手の話の内容に興味がなくても、相手に興味があれば「相手はなぜそう思うのか?」など、何か質問できるはずです。

質問力を上げようと質問集を買うのではなく、相手の良い面にスポットを当てて、相手を好きになることが、質問力を上げる近道です。

知の巨人と称されたピーター・ドラッカーも「コンサルタントとしての私の最大の長所は、無知になりいくつかの質問をすることである」と言っています。質問は、相手に好意や関心を示し、信頼関係を築くと同時に、相手を深く理解するのにも役立つのです。

お金・政治・宗教・性的な話はマナー違反

質問をするときに注意したいのは、興味本位の質問をしないことです。これは、カウンセリングの基本です。

以前、友人と旅先でタクシーに乗ったときのことです。

タクシー運転手
写真=iStock.com/dontree_m
※写真はイメージです

運転手「東京から移住して、本当にストレスフリーで最高です」
友人「運転手さんは、東京では相当大きな会社で、高い役職で稼いでたんですか?」
運転手「いやー……。それなりです」
私「東京は人も多いし、満員電車とか渋滞とか大変ですよね。こちらは自然豊かで混雑なし。ストレスフリーっていうのは、そのあたりですか?」
運転手「そうですね。人混みとかは懲り懲りなんですよ。今の家も、近くに民家がないところを探して住んでます」

友人は、悪気なく興味本位の質問をしています。雑談では、お金・政治・宗教・性的な話はマナー違反とされています。

相手が話したいことは、すでに会話の中に出てきています。相手が会社や役職について話したのなら、それについて質問しても問題ないですが、そうでなければNGです。

質問する際は、相手がよい気分で答えられるかを想像することが大切です。役職や稼ぎの話で気分がよくなるのか、詮索されて嫌だと感じるのかを考えることです。

私は、運転手さんの話から「ストレスフリー」という感情のキーワードを拾い、会話を広げました。車も人も、急接近するのは危険です。