ハイブランドがカトリック国で生まれやすい理由

この傾向は各国が強みとするビジネスの類型にも関わっています。たとえばトップクラスのラグジュアリーブランドの多くはフランスやイタリアといったカトリック国で発祥していますが、これはホフステードが指摘する「権力格差の高い国」に見られる傾向、すなわち「特権やステータスシンボルが身分や経済力を示すシンボルとして社会で機能する」という点とよく符合します。

逆に、ロックミュージックなど、若者を対象にした文化産業やコンピューター産業など、自由でフラットであることに大きな価値観をおく産業で存在感を放つ国の多くがプロテスタント諸国であることにも気がつくでしょう。

そもそもプロテスタントの語源となった「プロテスト」は、本来「反抗する」という意味です。では、誰に「反抗する」のか? 宗教改革の当時、世界で最も大きな権威を持っていたローマ・カトリック教会の首長であるローマ教皇です。

この運動の口火を切ったのはドイツの神学者、マルティン・ルターですが、彼のしたためた、いわゆる「箇条の質問」は、それ自体がローマ教皇に向けての、言うなれば「シャウト」だったわけで、あらためてすごいことをやったものだと思います。

権力格差が小さい国ほど国際競争力が高い

国民性というものが宗教だけによって決まるとは考えられませんが、プロテスタントの影響の強い国々では全般に権力格差が小さい、つまり「権威に対して反抗的である人が多い」のは、プロテスタントの出自とその後に歩んできた歴史を踏まえれば腑に落ちます。

そして、さらに興味深いのは、この権力格差のスコアと、国別の国際競争力ランキングには一定の相関が見られるということです。

図表2は、縦軸に国別の国際競争力ランキングを、横軸に権力格差指標をとって国別のデータをプロットしたものです。一覧しておわかりいただけるように、グラフ全体に左上=権力格差が小さく、国際競争力ランキングは上位の国々から、右下=権力格差が大きく、国際競争力ランキングは下位の国々へと広がる傾向が見て取れます。