それでは国内政局はどう動いていくのか。自民党内でただちに「岸田おろし」は広がらず、6月解散は見送られ、9月の総裁選までこう着状態が続くとみられる。
最大の鍵を握るのは、9月時点での米大統領選の情勢だ。バイデン劣勢が顕著になっている場合は、岸田首相は出馬を断念する可能性が高い。逆にバイデン氏が巻き返し優劣が混沌としている場合は、岸田首相は出馬に踏み切るだろう。
自民党内に「11月の米大統領選までは様子見」という空気が強まれば、岸田再選の可能性は十分にある。もちろん「ここで再選を許せば岸田首相が息を吹き返す」という危機感が強まり、石破氏や上川氏ら対抗馬へ支持が流れる展開もあり得る。
主権国家としては不甲斐ないが…
自民党総裁選で現職が敗れたのは1978年の福田赳夫首相だけだ。これを根拠に「岸田首相が再選を果たす」という見方も流れているが、これは説得力を欠く。なぜなら、歴代首相の多くは勝てないとみた場合は不出馬・退陣の道を選んだからだ。岸田首相の前任の菅義偉前首相がそうだった。
岸田首相も「勝てるかどうか」で出馬か不出馬を決めるだろう。歴代首相と違うのは、自民党内の情勢よりも米大統領選の情勢を最大のバロメーターとして決断する点だ。
自民党総裁選の行方は米大統領選の動向に大きく左右される。自民党の有力者たちは海の向こうの大統領選の動向を固唾を飲んで見守っている。主権国家としては不甲斐ないが、それが日本政治の現状である。
繰り返しになるが、仮に米大統領選が先に行われてバイデン氏が敗れ、トランプ政権が復活すれば、岸田首相が総裁選に出馬することはあり得なかった。大統領選に先立って総裁選が行われる手順前後が「すでに詰んでいる岸田政権」の命運を変えるのか。「日米連動政局」の先は読みにくい。