バイデン大統領は今年11月の大統領選でトランプ前大統領にリードを許している。米国内で批判が高まるウクライナやイスラエルへの外交政策について世論を納得させ、大統領選を勝ち抜くには、バイデン政権の言うがままに財政支援を肩代わりしてくれる岸田政権は「欠かせないアイテム」なのだ。
実はこれが岸田首相の唯一最大の自信の根拠なのである。
「米政権の後ろ盾こそ最大の権力基盤」
バイデン大統領は何があっても岸田首相を切り捨てない。日本国内で内閣支持率が低迷していても、自民党内で「岸田おろし」が動き出しても、バイデン政権の後ろ盾がある限り、岸田内閣は倒れない。
各界に働きかけ、岸田首相の総裁再選を陰に陽にサポートしてくれるはずだ。キングメーカーの麻生太郎副総裁も、非主流派のドンである菅義偉前首相も、ポスト岸田を狙う茂木敏充幹事長や石破茂元幹事長も、ポスト岸田に急浮上してきた上川陽子外相も、米国の意向には決して逆らえない。
日本国内でどんなに岸田批判が高まっても、バイデン政権に寄生して「一心同体」でさえあり続ければ、財界も官界もマスコミ界も岸田政権を見限らず、自民党内の大勢も最後は自分になびいてくる――岸田首相はそう確信している。「米政権の後ろ盾こそ最大の権力基盤」というわけだ。
もちろんバイデン大統領が11月の大統領選に敗れれば万事休すである。トランプ政権が復活すればウクライナ支援から撤退し、国際情勢は激変するだろう。バイデン政権に追従してきた岸田外交は居場所を失う。その時は自らも退場するほかないと岸田首相は腹をくくっているのかもしれない。
岸田首相が描くのは「日米連動政局」だ
岸田首相にとって幸運なのは、米大統領選(11月)より自民党総裁選(9月)が先にやってくることだ。
仮に大統領選が先に行われ、トランプ政権が復活したら、岸田首相の総裁再選は絶望的である。だが、先に総裁選が行われる以上、バイデン氏がいくら劣勢で「もしトラ」に備えた動きが広がっていても、9月時点で勝敗は決していない。バイデン氏が土壇場で巻き返す可能性は残る。「バイデン政権の後ろ盾」は総裁選時点でなお一定の効力を維持しているに違いない。
岸田派関係者は「11月の米大統領選の行方を見定めるまで、9月の総裁選は岸田続投で様子を見るという流れをつくれれば、6月解散を見送っても総裁再選は可能ではないか」と期待を抱く。米大統領選でバイデン政権が継続すれば岸田首相も権力の座にとどまり、トランプ政権が復活すれば来春の予算成立を花道に退陣し、「新しい首相」に引き継いで来年7月に衆参同日選挙を行えばよい。
岸田首相が描くのは「日米連動政局」だ。バイデン政権と「運命共同体」になることで政権延命を図ろうというわけである。