田中角栄に続いて橋本龍太郎の首相在任期間も抜いて戦後8位となった岸田内閣の余命はあと4カ月。自民党内の誰もがそう確信しているのに、張本人の岸田首相はなぜか意気軒昂だ。大型連休もフランス、ブラジル、パラグアイを3泊6日で駆け巡る世界一周の弾丸ツアーを精力的にこなし、補選全敗もお構いなしの気配なのだ。

6月23日の国会会期末の直前に衆院を解散すれば、総選挙の投開票日は7月7日の東京都知事選と同時になる公算が高い。ところが岸田首相は7月9日から米国ワシントンで開催されるNATO首脳会議に参加する方針を迷いなく決めた。

もはや6月解散をあきらめ、大好きな外遊で頭がいっぱいのように見える。

「総裁選前に解散しなくても総裁再選は可能」と首相は強気

それでも9月の総裁選で再選を果たす道はあきらめていない。単に強がっているのかというと、どうやらそうでもなさそうだ。周辺には「総裁選前に解散しなくても総裁再選は可能」との見方を示しているという。

岸田首相の自信の根拠はどこにあるのか。永田町を探し歩いてもその答えは見つからない。国内政治的にはどう考えても「岸田首相は詰んでいる」のだ。

ナゾを解く鍵は、4月の国賓待遇の訪米にある。岸田首相は大統領専用車ビーストに同乗してバイデン大統領と満面笑みでツーショット写真に収まり、晩餐会では英語スピーチでジョークを連発してご満悦だった。国会で裏金問題の追及を受けてみせる沈鬱な表情とは別人のようだった。

岸田内閣が発足した4カ月後、ロシアがウクライナに軍事侵攻した。それから岸田首相はバイデン政権に全面的に服従し、ロシアを強く非難してウクライナ支持を表明した。ウクライナのゼレンスキー政権に武器装備品を送り、1兆円を超える支援を打ち上げてきた。戦後復興でも巨額の財政負担を担う方針だ。

しかも東アジアの緊張が高まったとして、米国製ミサイル・トマホーク400発を総額2000億円で一括購入。米国内で長引くウクライナ支援への不満が高まり窮地に立つバイデン政権を財政面で徹底的に支えてきた。

バイデン米政権の「欠かせないアイテム」

岸田夫妻の国賓待遇の訪米は、バイデン政権に尽くしてきた「ご褒美」の側面が強い。同行記者団は「岸田首相は破格の厚遇を受けた」とワシントンから報じていたが、日本が米国に献上してきた「巨額の貢物」からすれば、ずいぶんと安い返礼である。

バイデン大統領は昨年6月、日本の防衛費の大幅増額について「私は3度にわたり日本の指導者と会い、説得した。彼自身も何か違うことをしなければならないと考えた」と明かし、岸田首相に増額を迫ったことをあけすけに暴露した。

今年5月1日には、日本をロシアや中国と同列に並べて「彼らは外国人嫌いだ。彼らは移民を望まない。移民こそが我が国を強くしている」と見下した。岸田首相を「金づるの配下」としか見ていないのだろう。