大きな数字から問題点を考える習慣を

さて、ここまで日本の人口を基準にマクロな視点で数字を見てきました。

ですが、実際の仕事でよく使うのは、さらに細かい数字の「@変換」です。

今や私たちの生活に欠かせない輸送の大手・ヤマト運輸(ヤマトホールディングス)の従業員数で「@変換」してみましょう。

ヤマトホールディングスの売上は約1兆8000億円です(2023年3月期連結決算)。

連結決算というのは、グループ会社の売上も含めた決算の数字を指します。そのため、社員数もヤマトホールディングス全体の約21万人で計算してみます。

すると、1兆8000億円÷21万人=857万1428.57……

つまり、1人あたり約850万円の売上をあげているということです。

対して、同じ大手輸送業の佐川急便(佐川ホールディングス)は従業員約9万人で、売上が約1兆4000億円です。1人あたりの売上は約1500万円になります。

【図表5】輸送業者の売上比較

一見すると、ヤマト運輸の売上のほうが高いように見えますが、従業員単位では佐川急便のほうが2倍近い売上をあげています。表面上の大きな数字だけを見て「ヤマト運輸のほうがすごい!」と判断するのは誤り、ということがよくわかると思います。

だからといって、「1人あたりの売上が低いから効率が悪い」と決めつけるのも危険です。その数字の裏には、受託している荷物の数や料金、輸送範囲、人員コストなど、さまざまな差異が含まれています。効率のよさを問うなら、すべての条件を比較する必要があるのです。

斎藤広達『頭のいい人が使っているずるい計算力』(PHP研究所)
斎藤広達『頭のいい人が使っているずるい計算力』(PHP研究所)

経営や人事の仕事をしている人なら、先ほどの数字から、人材に余剰はないか、業務の効率化はできているか、人材不足に陥っていないか、業界の平均と比べてどうなのか、など確認すべきポイントのアタリをつけられるでしょう。

数字に強い人というのは、反射的に「@変換」をして、こうした大きな数字から問題点を考える習慣がついているものです。

大きな数字で思考停止しなくなるには、「@変換」をするクセをつけるのが一番です。何度もトライして計算に慣れていきましょう。

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