スマートカート導入、買い物客が手作業で登録する方式に
Amazonが個人情報の懸念に応えたとは言い切れないが、いずれにせよ同社は少なくともAmazonフレッシュについて、ジャスト・ウォーク・アウトの廃止を決めた。テックメディアによる先行報道に次いで、4月2日の米ウォール・ストリート・ジャーナル紙などが報じている。
ジャスト・ウォーク・アウトに見切りを付けたAmazonは、代わりにスマート・ショッピングカート「ダッシュ・カート」を導入する。店内にカメラを設ける代わりに、車のダッシュボードのような装置をショッピングカートに搭載したものだ。
ダッシュボードの下部にはコード読み取り用のスキャナが用意されており、客はカート使用前にAmazonアプリのコードなどをかざしてカートに「サインイン」する。商品をカートに入れる際、ダッシュボード前方のスキャナで顧客自身が商品をスキャンすると、料金に計上される。顧客による手作業での登録に落ち着いた形だ。
ロサンゼルスのニュース局「ABC7」サンフランシスコ・ベイエリア局は、ホール・フーズのカリフォルニア州サンマテオ店などですでに導入されていると紹介している。Amazonのレジなしストアを担うダッシュカートだが、否定的な反応も聞かれる。万引きが横行するサンフランシスコ周辺で、どの程度正しく利用されるか不透明だ。
セルフレジを設置に逆戻り
カートへの実質的な転換だが、Amazonとしてはあくまで棲み分けを行ったとの立場だ。AP通信によると同社は、株主向けのレターで、小型店を訪れる客はカートなしで素早くショッピングを済ませたい一方、「大型食料品店の顧客は、一緒に移動してくれるショッピング・アシスタントを求めているということに私たちは気づいたのです」と説明している。
広いスーパーにはダッシュ・カートが向いている――との説明だが、万人が納得したわけではない。米有力テックメディアのヴァージは、商品数の多いスーパーではジャスト・ウォーク・アウトが機能しなかった事実を暗に認めた形ではないか、と指摘している。
Amazonはダッシュ・カートに加え、セルフレジも導入する。米ギズモードは4月3日、「Amazonフレッシュの店舗では今後、Amazon会員でない人に向け、セルフレジも設置される」と報じた。
しかしこの動きは、セルフレジを廃止したい小売業界の流れに逆行している。一時期は導入が拡大したセルフレジだが、アメリカでは一部商品をスキャンしないなどの不正利用が深刻化。すでに小売り大手のターゲットが縮退の方針を示していたうえ、米CBSは4月19日、ウォルマートも一部州で廃止や購入点数の制限に乗り出したと報じている。