雑誌編

雑誌で情報を集めたり、流行のベストセラーを読んだりということは、ビジネスマンにとって必要だ。私自身も、「プレジデント」「週刊ダイヤモンド」「週刊東洋経済」の3誌は毎号欠かさず読んでいる。「ダイヤモンド」「東洋経済」は、朝日新聞と読売新聞のように同時に似たような特集が別の切り口から組まれることが多く、読み比べるのが面白い。「プレジデント」は、安心して読める老舗のような感覚だ。

ところで、売れている本が必ずしも原点となった経済理論をきちんと解説できているか、というと必ずしもそうではない。

例えば、以前大ブームになった脳科学の本で、一般の人が脳科学を理解できたことはほとんどないだろう。売れ筋の解説書を読んだところで、本当の知識は身につかない。テレビで池上彰さんの解説を見ても「そういえば池上さんも言っていた」というレベルでとどまり、あなた自身のビジネスにいかされているとは限らない。

業務命令で専門書を読めと言われたら、心理的に嫌で、なかなかページが進まず、つい歴史小説やマンガに逃げてしまうかもしれない。しかし、自分から高度な知識を身につけたいと思えば、やる気になる。有名人がどこかで話していたことではない、自分自身の知識として、ビジネスに役立てることができるはずだ。

ビジネスに役立つ本はどう選べばよいか。私はとりあえず2000円以上の本を読むことを勧めている。つまり、研究書や専門書のことだ。今回は2冊紹介する。

1冊は『影響力の武器―なぜ、人は動かされるのか』R・B・チャルディーニ著(2940円)。詐欺師、宗教の勧誘、承諾営業等のテクニックから、人にイエスと言わせるテクニックを学術的に研究した本。企業の経営陣に近い立場の人がこういう知識を持つと、売り上げを伸ばしたり、会社のビジネスの仕組みを変えることを考える際、ヒントになるだろう。

もう1冊は『プライスレス 必ず得する行動経済学の法則』W・パウンドストーン著(2520円)。

行動経済学による値付けの本。米国で売り上げ上位の会社が契約している行動経済学の価格決定理論を使ったコンサルティング会社についての記述は参考になる。例えば、ピーナッツバターの販売で、値段を上げずに、容器の形を変え、中身を減らすことで実質的な値上げに成功した例があげられている。大手外食チェーンをはじめ、この理論は日本でも浸透しつつある。

Recommend books

『プライスレス』W・パウンドストーン・著

D・カーネマンらの最新の行動経済学の研究が紹介。

『影響力の武器 なぜ、人は動かされるのか』R・B・チャルディーニ・著

承諾誘導のプロの世界に潜入し、人間心理を解明した。

『「ビジネス書」のトリセツ』水野俊哉・著

勝間和代から神田昌典、「HACKS!」シリーズまでビジネス書を完全解剖! この1冊で、本当に役立つ本を選べる。

※すべて雑誌掲載当時

(河崎美穂=構成)
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