これから大前研一さんの本に触れようという「あなた」のための入門連載、第3回目のテーマは「初めて大前さんの本を読もうという若い人たちには、何を薦めますか?」。大前さんが選んだ1冊は、自身がまだ30代なりたての頃に書いた本だった。

ヤフオク7万2000円事件

これから大前研一の本を手に取ろうという若い世代にお勧めする1冊。経営書でいえばまずは『企業参謀』(1975年)だろう。

私自身、経営をまったく分からなかった時期に記した本だから、やさしく書いてある。私が学長を務めるビジネス・ブレークスルー大学では、まず本書を教材にして企業戦略の基本を学ぶ。現在、プレジデント社から出ている新装版には『企業参謀』『続・企業参謀』の2冊が収録されているので、まとめて読むには都合がいい。

入社5~10年、少し経営の勉強を積んだ20代後半のビジネスマンであれば、これもプレジデント社から新装本が出ている『マッキンゼー現代の経営戦略』(79年)が、少々噛み応えがあっていいと思う。『企業参謀』同様に30年以上年前に書いたオーソドックスな経営書だが、内容は今なお古びていない。

マッキンゼー時代に編み出したフレームワークや分析の仕方、組織の動かし方を紹介しているので、しっかり読み込めば企業戦略を構築するための有効なツールが身に付くだろう。先日もある自動車メーカーの関連会社を訪ねたら、「若い頃に本書で勉強して大いに役立った」とその会社の常務から感謝された。

数年前にヤフーオークションで昔の『マッキンゼー現代の経営戦略』に7万2000円の値が付いているのを偶然見かけたので、編集者に「怠慢だ!」と怒ってすぐに復刻版を出させたこともあった。