前回、社会も政治も「物理学」として見ていると語った大前さん。その「物理の眼」はどのように鍛えられたのか。高校、大学時代の大前流学習法とは?
クラリネットと原子力
自然科学の本を読むのが好きで、高校、大学時代を通じて岩波文庫の自然科学系の本はほとんど読み倒した。宇宙の起源から物質の微細な構造まで、要するに「モノは何からできているのか」ということに興味があった。物性や普遍的な法則にも関心が広がって、ニュートン力学に始まって、マクスウェルの電磁方程式、ハイゼンベルクの不確定性原理ほかの量子力学、統計力学、熱力学……。学校の勉強とは関係ないことも本を読んで自分で学んだ。
生物はそんなに好きではなかったので、深く入り込まなかった。今は脳やバイオなど生命科学が脚光を浴びる時代だが、そちら方面は自分では弱いと思っている。ただし、脳に関しては『右脳革命』(トーマス・ブレークスリー著 1981年)という翻訳本を出してから、自分なりに脳の研究を続けてきた。創造力の源泉はどこにあるのか、新規事業などを提案しなくてはいけないコンサルタントとしては興味があるのだ。
私の自然科学の守備範囲は相当広いが、大学の専攻は何かといえば「応用化学」である。深い考えがあって選択したわけではない。たまたま化学が好きだったから。
高校の成績はほとんどオールAに近い。英語は先生よりできたし、数学はもらった教科書を春休みに読んで終わり。授業に出なくても期末試験を受ければトップだった。数IIIの教科書も一度目を通せば全部理解できた。
飛びきり強かったのは国語。国語の先生からは「成績表に10を付けたのはオマエだけなのに、なんで文学部に行かないんだ!」と怒られたぐらいである。特に古文が好きで、卒業後の春休みに日本書紀を片手に古墳めぐりをして、大阪府羽曳野市にある清寧天皇陵(白髭山古墳)など多くの御陵を見に行った。なかには管理人もいない廃墟に近いものもあったが、そう言うところに入り込んで「古代」に浸ったこともある。