資産100億円の会社より資産1000億円の会社が安心とは限らない
「財務三表」と言われる「貸借対照表(B/S)」「損益計算書(P/L)」「キャッシュ・フロー計算書(C/F)」の中でも、「貸借対照表」に注目してみましょう。
〈ポイント1〉徐々に解像度を高めていく
簡単に言えば、貸借対照表は「お金の調達と運用のバランスを見るためのもの」です。
貸借対照表を読み解くうえでまずするべきは、大雑把に数字を把握することです。資産の合計額、負債の合計額、純資産の合計額を抽出し、それを右のような3つの箱に記入して眺めてみましょう。
これを眺めるだけで、その会社が安全かどうか、つまり倒産せずにすむかどうかを見極めることができます。
貸借対照表の右側にある2つの箱の意味は、
・「負債」=将来、返済しなければならないお金
・「純資産」=返済義務を負わないお金
です。
では、次に2つの会社の貸借対照表の数字を見比べてみましょう。
会社Aは資産の合計額が100億円。これに対して負債の合計額が40億円、純資産の合計額が60億円あります。
会社Bは資産の合計額が1000億円。これに対して負債の合計額が800億円、純資産の合計額が200億円です。
あなたがもし、このどちらかの会社に投資する、あるいは就職する場合、安全性を重視するならどちらを選びますか。
日本では就職先としても、また取引先としても、規模の大きな会社が信頼されます。その点で言えば、会社Bの規模は会社Aの10倍ですから、信頼されるのは会社Bと答える人が多いかもしれません。
会社の安全性はまず自己資本比率でチェックする
しかし、貸借対照表で考えると、会社Bは負債が800億円もあります。負債は将来必ず返済しなければならないお金ですから、その額が多いほど、将来会社のお金がどんどん減っていくことになります。
この点、会社Aは資産規模の比較で、会社Bの10分の1しかありませんが、純資産の合計額が負債の合計額を上回っています。つまり、会社Aは会社Bに比べ、返済しなければならない金額の割合が少ないわけです。そう考えれば当然、安心できるのは会社Aです。
このように、資産の合計額に占める純資産の合計額をパーセンテージで示したのが「自己資本比率」です。図表2のように、自己資本比率が高い企業は、それだけ安全性が高いことになります。
ちなみに、会社Aの自己資本比率は「60億円÷100億円=60%」になり、会社Bのそれは「200億円÷1000億円=20%」になりますから、圧倒的に会社Aのほうが高くなります。
貸借対照表は、会社の財務状況を把握するための決算書です。会社の財務状況とは、言い換えるならば、「会社が今後とも安心して経営を続けられるだけの基盤を持っているかどうか」ということです。
資産の合計額、負債の合計額、純資産の合計額という、3つの数字のバランスを見れば、大雑把ではありますが、その全体像を素早く把握できるのです。