川勝路線の継承は難しい
川勝氏の辞任が前倒しされた結果、静岡県知事選挙は5月26日投開票と決まった。今後立候補者の顔ぶれが出揃い、それぞれの公約が明らかになっていくだろうが、どの候補になっても、リニア問題において川勝路線の完全な継承は難しいと思われる。
確かに過去4回の知事選挙で勝ってきた川勝知事の実績を考えれば、静岡県民からの支持は大きかったのだろう。しかし、静岡県民の大多数にとってリニア中央新幹線問題は日常生活に直結するものではなく、雇用、福祉、教育など、もっと生活に密着した問題が重要であり、川勝知事のリニア中央新幹線への姿勢だけが評価されたわけではないだろう。
しかし、川勝知事自らの「リニア問題がひと区切り」が辞任の理由であるとの発言が全国的に大きく報じられた。その結果、次の静岡県知事選において、リニア問題は大きな争点の一つとなり、全国のメディアから否応なしに注目を集めるだろう。そのような状況で、大きな議論を巻きおこし辞任する川勝知事の方向性を全面的に引き継ぐことが選挙戦にプラスになるとは考えづらい。そうなると、少なくともリニア問題が現状より悪化することはないだろう。
リニア問題は、2024年2月に国土交通省が設置した「リニア中央新幹線静岡工区モニタリング会議」に舞台を移し、今後の静岡工区の着工に向け、静岡県とJR東海の対話を促進させる方向性が示されている。
「リニア開業」への道のりはまだまだ遠い
第1回目の会議において、静岡県の森副知事は会議内での「47項目」の協議の続行を求めた。
「47項目」とは、2019年に静岡県が「引き続き対話を要する事項」として列挙したものだが、静岡県はこのうち30項目について「引き続き対話が必要」との認識を示している。
一方、国は47項目の議論は終了したとの認識を示している。
このように協議が現在進行中である以上、仮にリニア推進派の知事が当選しても、現在の状況を劇的に変えるのは難しいだろう。
仮に静岡工区が着工に至ったとしても、静岡を通る南アルプストンネルの建設だけで10年かかると言われている。リニア中央新幹線開通への道のりはまだまだ遠い。
しかしながら、知事交代を契機として、関係者での前向きな議論により膠着状態を脱却し、まずは新たな開業年度を示すことができるよう、着工に向けての合意形成を図ることを強く期待したい。