禁煙に挑戦しても失敗し続ける人はどうすればいいか。精神科医の保坂隆さんは「『タバコはやめません』と腹をくくってしまうのも、ひとつの考え方だ。いい年齢になるまでタバコを吸ってきた場合、今さらやめたところで手遅れの感が否めない。本人もそう感じているのなら、いっそのこと、タバコをおいしく楽しんでしまえばいい。『やめなければ』『やめなければ』と罪悪感を持ちながら吸うのと、心の底から『うまいなあ』と楽しんで吸うのでは、心に与える影響がまるで違う」という――。
※本稿は、保坂隆、西崎知之『おだやかに80歳に向かうボケない食生活』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。
タバコを吸うと脳細胞の寿命を短くする
今となっては信じられないことですが、タバコは長い間、無害な嗜好品と考えられてきました。喫煙が健康に悪いということがわかってきたのは1940年代に入ってからです。
ただし、わかっていてもやめられないのがタバコの魔力です。喫煙者の60%以上が一度ならず禁煙にトライしたものの、成功したのは10人に1人だけとされています。
それでも、日本たばこ産業によると、1966年には83.7%あった男性の喫煙率が現在ではその3分の1ほどに減少しているそうです。
喫煙の害としては慢性気管支炎、心臓疾患、肺気腫、早産、脳卒中などが知られています。
しかし、脳細胞を通常よりも速いペースで死滅させていることに注目する人はあまりいないようです。
タバコというと、まずニコチンの害が思い浮かびます。
ニコチンには血管を収縮させる働きがあるので、脳内を含め全身の血液の循環が悪くなります。
血液循環が悪くなると、脳が酸素不足と栄養不足に陥ります。これが脳細胞の寿命を短くするのです。
しかも、喫煙すると血液内に溶け込む酸素の量が極端に少なくなります。つまり、身体中に十分な酸素を送れなくなってしまうということです。