「人格否定」はやってはいけない叱り方の典型

人間は必ず過ちを犯します。子どもであればなおさらです。何度も同じ過ちを繰り返さないように、子どもを叱るのは必要なことです。

ただし、その際には正しい叱り方をすることが大切です。なぜなら、間違った叱り方をすれば、子どもの心を傷つけ、余計に問題行動が増えてしまったり、無気力になってしまったりするからです。なかには、深く傷ついた結果、今回のように自殺をしてしまう子が出てきてもおかしくはありません。

ソファに座る息子を説教する母
写真=iStock.com/takasuu
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そして、そうした間違った叱り方の典型の1つが、今回の指導にあったような「卑怯者」というレッテルを貼る人格否定です。

人格を否定する叱り方をすると、子どもの自己肯定感が低下するおそれがあります。その結果、「どうせ自分は卑怯者なんだ」というセルフイメージを持つようになり、そのセルフイメージに沿って「卑怯者にふさわしい行動」を選択するようになっていきます。つまり、問題行動をかえって増やすことに繋がってしまうというわけです。

同時に自分の人格を否定した親や指導者への強い不信感を抱くようになり、人格を否定する親や指導者に対して反抗するようになっていってしまいます。子どもを良い行動に導いていくうえで、人格否定は絶対にやってはいけない叱り方なのです。

人格を否定する言葉には、ほかにも「意地悪な子だ」「落ち着きがない子だ」「不注意な子だ」などさまざまあります。こうした言葉は、子供の成長を妨げてしてしまい、発揮できるはずだった能力を潰してしまう危険性があります。わかりやすい基準として、性格や能力など一朝一夕では変えられないものに焦点を当てると人格否定になりやすいということを理解しておくといいでしょう。

「行動」に着目した叱り方をするべき

では、どういう叱り方をすれば良いのでしょうか?

それは、人格ではなく、行動に焦点を当てた言い方にすれば良いのです。

「カンニングをするやつは卑怯者だ」は人格に焦点を当てた言い方です。それに対して、「カンニングは卑怯な行いだ」は行動に焦点を当てた言い方です。この2つは似て非なるもので、言われた側の受け取り方は大きく変わります。

子どもが悪い行動をしたときにまず伝えたいのは、「どんな時でもあなたは素晴らしい子である」ということです。子どもの人格や存在そのものをまずは丸ごと肯定してあげましょう。その上で、「どんな素晴らしい人でも、悪い行動をしてしまうことはある。悪い行動は変えていかなければいけない」と、伝えましょう。人格は肯定し、悪い行動を否定する。

これが子どもを叱るうえでの基本的な態度です。