都会でダメな人は田舎でもダメ

以前、近くの集落に都会から移住してきた若い女性が暮らしはじめました。彼女は「こんな田舎でわざわざ暮らしてやっているんだから、私を大切にあつかってほしい」という態度で、集落の人に甘えていた。

実際、やりたい放題で移住からしばらくすると集落の人たちが困惑し出しました。人の家に勝手に上がりこんで冷蔵庫から食材を拝借したり、集落共有のワラビを勝手に持っていったり、自分の家にもお風呂があるのに隣家のお風呂に毎日入りに行ったりしていた。

どうやら、お金を節約したかったらしいんですが、度を超していた。なにより村人や集落への敬意が完全に欠如していた。結局、しばらくすると彼女も集落から出ていってしまいました。

――田舎を見下しているというだけではなく、その人自身に大きな問題がある気がします。

彼女だけではなく、土地の人とうまくいかない移住者には共通点があるように感じるんですよ。都会での暮らし、つまり仕事や人間関係がうまくいかなかったから、田舎に移住しようと考える人が少なからずいます。

でも、都会でうまくいかなかったから田舎でうまくいくとは限らない。むしろ都会でダメだったら、田舎でもダメな可能性が高い。

熊の骨も身も煮込んだ熊汁。骨の部分はがぶりと「ほねかじり」して食べる
画像提供=大滝ジュンコさん
熊の骨も身も煮込んだ熊汁。骨の部分はがぶりと「ほねかじり」して食べる

なぜクマの狩猟は女人禁制なのか

移住先で、田舎者だと集落の人を見下したり、他力本願で集落の人たちに甘えたりしていたら、いつまで経っても集落の一員になれません。

移住者は、土地や文化、人に敬意を持つ必要がある。受け入れる側は、移住者を好きになる努力をする。移住にはお互いの歩み寄りが不可欠です。最悪の場合、お互いにすり減って共倒れになってしまう。

その点で、山熊田でも困った出来事がありました。

ある東京の男子学生が、伝統的に続いてきた熊の巻狩りを体験したいと山熊田に通っていました。何日も村の人の家に宿泊して食事も世話してもらっていました。でも、借りていた部屋は散らかし放題で、食事をごちそうになっても片付けも手伝わない。

ある日、彼が女子学生を連れて山熊田にきたんです。きっと「オレと一緒なら巻狩りに参加できる」とでも言ったのでしょう。でも、すでに巻狩りの時期は終わっていた。

そもそも、春に行われる巻狩りは、山熊田にとって、神事で女人禁制なんです。時代錯誤だと思われるかも知れませんが、村で大切に守ってきた習俗です。

私はもちろん、山熊田に嫁いで70年になる私の義母も、もちろん巻狩りに参加した経験はありません。当初は私も女性差別なのか、とも感じたんですが、どうやら話はそう単純ではないようです。